サンショウウオ  エッセー

サンショウウオ

 
先日、クロサンショウウオの卵をみつけた。

その時、「サンショウウオだから、山椒の匂いがするんだろうな」、と思った。

だが、畑正憲氏の『天然記念物の動物たち』を読んでみると、サンショウウオの匂いは山椒の匂いではないらしい。

天然記念物の話だから、畑氏が書いているのはオオサンショウウオのことである。

でも、サンショウウオの仲間なのだから、おそらく匂いは同じか似ているのではないかと見当をつけた。

畑氏は山椒の臭いがするかと思って、サンショウウオを抱きかかえて匂いをかいだが、匂いは何もしなかった。

夜になって、風呂を使おうとして、ポロシャツを頭の上に引き上げた。

その時になって、サンショウウオのものらしい匂いに初めて気がつくのである。

サンショウウオの匂いのもとは、背中の皮脂腺から噴き出す粘液である。

その粘液はすぐには匂いをたてず、空気に触れて、酸化、分解が進んで初めて匂うらしい。

畑氏は、その匂いが何に似ているかを表現しようとして、苦慮している。

しかし、かぐわしい香りだと言っている。

早朝や夜半、庭に立つと、ふとかぐわしい香りをかぐことがある。

花の香りに似ていながら、花ではなく、木々の緑か、木そのものから発散されていると分かる、甘く、澄んだ香りである。

もしかしたら、樹液の香りなのだろうか? 

セクシュアルな香りでもある。

夜露が降りてからの時間帯であることが多い。

畑氏の文章から想像した匂いは、夜の木立のあの匂いであった。

クロサンショウウオの卵をみつけた、あの場所に通えば、いつかはその匂いを知ることができるだろう。

『天然記念物の動物たち』によると、オオサンショウウオの産卵期は、八月から九月となっている。

《上流へ上流へとはいのぼり、清流の石の下などに、ほぼ六〇〇ほど卵を産む。ヒキガエルのように、寒天質の紐にくるまれた卵を》と書かれている。

クロサンショウウオとオオサンショウウオでは、産卵の時期も、卵をおおう皮膜もまるで違うらしい。

この続きは、いつかまたお知らせできるかと思う。





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