赤トンボ  童話

   赤トンボ 
     
あんなに暑い夏だったのに、台風がすぎていったら朝夕がヒンヤリするようになりました。

山の冷たい水が流れるあたりに引っ越していた赤トンボたちはほっとしました。

樹々にはさまれた流れの上や、沼の上は風が通り、とても気持ちよく飛べます。

「ああ、この涼しい風、気持ちがいいね」

「ほんと。お日さまの陽ざしもこのくらいならとっても気持ちがいいね」

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魚を釣りにきた人は赤トンボがいっぱいの沼を見てうれしくなりました。

赤トンボたちはお日さまの光をすかしてキラキラ、キラキラ輝いています。

赤トンボが近くを飛ぶと枯れ葉のようなかわいた音がカサッ、コソッと聞こえます。

お日さまが山のすぐ上あたりまで落ちると、沼の半分がかげりました。

赤トンボたちはお日さまの残る明るいところに移りました。

それでも空気はどんどん冷たくなります。

赤トンボたちは沼のふちにめぐらされた鉄の柵につぎつぎに移りました。

鉄の棒でつくられた柵は、もうすっかりさびていましたが、お日さまにぬくめられ、日がしずんでもあたたかいのです。

「ここならほら、まだあたたかいでしょ」

「ほんとだ。ぽかぽかで気持ちがいいね」

「でも、すっかり冷えてしまう前には、どこかにもぐらなくちゃだめだよ」

赤トンボたちはそんなことを言い合いながら、鉄の棒の上でうっとり翅の力をぬきました。

「気持ちよさそうだなあ。あったかいんだろうな」

釣り人がつぶやきました。

朝晩はめっきり寒くなり、トンボたちはまもなくこのまま動かなくなってしまいます。

「このあたたかい眠りのまま夢の続きをおえてほしいな」

あたたかい鉄の棒にいこっている赤トンボを見ながら釣り人は思いました。
      
タグ: 童話 相馬市 福島県



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