ビワ 童話
だれのものでももないビワの木がありました。
ビワは、川の土手の上に、ポツンと立っていました。
ずうっと昔に、川遊びにきた子供が、ここでビワを食べ、その種をここではきだしたのです。
運よく日あたりのよい土手だったので、ビワはそこに根をおろし、それから芽を出し、毎日すこしずつ大きくなりました。
今では、たくさんの実をつける、りっぱなビワの木になりました。
実のなる夏になると、まず、たくさんの小鳥たちがやってきます。
子供たちもやってきますし、魚をつりにきたおじさんたちも、通りがかりに、ビワを三つ四つ食べてゆきます。
でも、ビワの木のまわりがにぎやかなのは、ビワが実をつけている間だけです。
年の暮れの花の時期にはアブがやってきますが、それいがいはもうだれも遊びにきてくれません。
さびしくなると、ビワは思います。
「どこかの庭先にあるビワなんかとはちがうんだ。ぼくは、だれのものでもないビワなのだから」
そう思うと、ビワはきゅうに気高いビワになったようで、きらいな西風に吹かれても、がんばることができました。

夏休みにはいったある日、二人の子供がやってきました。
ビワはたくさんの実をつけていました。
「食べたいだけ食べてもいいよ」
大きな子がいいました。
小さな子はびっくりしてききました。
「このビワ、だれのビワ?」
「だれのビワでもないよ。コトリだって、サルだって、クマだって、だれだって食べてもいい、みんなのビワさ」
これを聞いて、ビワは枝をゆらすほどおどろきました。
だれのものでもないビワが、みんなのビワだなんて、これまで一度も思いついたことがなかったからです。
ビワは、強い西風にたった一人心ぼそく吹かれている自分を、ちょっと思いだしました。
それから、こう思いました。
西風はきらいだ。
でも、そんな時、これからは〈みんなのビワだ〉と思うことにしよう。
ビワは、川の土手の上に、ポツンと立っていました。
ずうっと昔に、川遊びにきた子供が、ここでビワを食べ、その種をここではきだしたのです。
運よく日あたりのよい土手だったので、ビワはそこに根をおろし、それから芽を出し、毎日すこしずつ大きくなりました。
今では、たくさんの実をつける、りっぱなビワの木になりました。
実のなる夏になると、まず、たくさんの小鳥たちがやってきます。
子供たちもやってきますし、魚をつりにきたおじさんたちも、通りがかりに、ビワを三つ四つ食べてゆきます。
でも、ビワの木のまわりがにぎやかなのは、ビワが実をつけている間だけです。
年の暮れの花の時期にはアブがやってきますが、それいがいはもうだれも遊びにきてくれません。
さびしくなると、ビワは思います。
「どこかの庭先にあるビワなんかとはちがうんだ。ぼくは、だれのものでもないビワなのだから」
そう思うと、ビワはきゅうに気高いビワになったようで、きらいな西風に吹かれても、がんばることができました。

夏休みにはいったある日、二人の子供がやってきました。
ビワはたくさんの実をつけていました。
「食べたいだけ食べてもいいよ」
大きな子がいいました。
小さな子はびっくりしてききました。
「このビワ、だれのビワ?」
「だれのビワでもないよ。コトリだって、サルだって、クマだって、だれだって食べてもいい、みんなのビワさ」
これを聞いて、ビワは枝をゆらすほどおどろきました。
だれのものでもないビワが、みんなのビワだなんて、これまで一度も思いついたことがなかったからです。
ビワは、強い西風にたった一人心ぼそく吹かれている自分を、ちょっと思いだしました。
それから、こう思いました。
西風はきらいだ。
でも、そんな時、これからは〈みんなのビワだ〉と思うことにしよう。