2006/2/23

旅の食14  飯田線の旅

 鯉を食べる。長野県の佐久地方は鯉が名産品で、もちろん観賞用の錦鯉ではなく食べる方の鯉だ。だから長野では鯉を食べる食文化が根付いていて、岡谷あたりのキヨスクで売っている駅弁の「杣人弁当」(そまびと・・きこりの意)にも小さな鯉の甘露煮が入っていたように記憶している。長野は海に面していない県なのだから、魚と言えば川か湖で採れたものとなるのは当然で、鯉はその中でも最も大型魚になる。一般的に川魚は、それぞれ独特の癖のある香りがする。鯉はよく泥臭いなどと言われるが、実際には泥臭ではいが、肉にやはり独特の香りがある。ゆえに刺身(あらい)出たべるときは、一般的なわさび醤油ではなく酢味噌だれで食べる。それ以外の調理法としては味噌で煮込んで汁にしたり、あるいは甘露煮にしたりと、かなりきつめに味をつけて食す。何しろ癖が強いので、普通に魚を食べる人でも、鯉を食べない人が少なくない。さらに、ものすごく硬い小骨が多いのも特徴で、かなり食べにくい。しかし、長野では実に普通のお総菜として定着しているようで、駒ヶ根駅前のマーケットの鮮魚コーナーに、パックに入って甘露煮が置いてあった。

 旅行者というのは実にわがままで、山奥の旅館でも夕食にマグロの刺身やエビフライが出ないと怒り出す御仁が居るそうだ。しかしねぇ、せっかく旅行にきてるんだから、海から離れた山奥でマグロの刺身もないだろう。そんなのは普段マーケットで買ってきて食べればいい。大人しく川魚を食べればいいのだ。以前天竜峡にあったある旅館では夕食に鯉が出た。僕は鯉の甘露煮が好きだから、けっこうそこに泊まるのが楽しみだった。天竜峡の崖の上というか縁に、離れがあって、それが崖方向に向かって傾斜しているのが(つまり全体が崖下に向かって傾いている)最高に楽しかった。そこもいつしか廃業して、現在は遊歩道沿いに名前だけが残った展望台になっている。
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