私が中学へ通う頃、クラブ活動に柔道部がなく他のクラブへ所属し、夜は岡崎の中心街にある柏木道場へ柔道の練習に通ったことがあります。
入門当初は道着に白帯をつけ道場の片隅で、顎を引いて頭を身体にくっつけ、畳に直接頭をぶつけないように、一人で来る日も来る日も受け身の練習をしたものでした。
やがて、先輩の背負い投げを受け、むち打ち症にならないよう、身体で覚え込むまで受け身の練習を繰り返したものです。投げられた瞬間、二階から一階の畳へ叩き付けられるような感覚で、受け身の態勢になっていたことを覚えています。
長野県松本市の柔道教室で2008年5月、当時小学6年生だった少年が重い障害を負った柔道事故をめぐり、今年4月30日長野地裁は有罪判決を言い渡しました。
道場での指導者は少年に「片襟体落とし」をかけたといいます。背負い投げならば、技に入ってから投げられるまで、瞬時とはいえ備える気持ちの余裕ができたと思うのですが、片襟体落としでは、気付いた時は既に畳へ叩きつけられていたのではないでしょうか。
新聞によれば、公判では主に「頭を打たなくても、脳が揺さぶられて静脈が破れる“加速損傷”を予見できたか」「体格や技量に応じて指導していたか」などが争われたようです。
私が高校へ入学した頃の柔道部は、黒帯を締めた同級生K君がいて、練習場での彼の顔は首がなく頭と胴体がくっ付いていて、まるで寺の門前で構える仁王像の様に恐ろしく、入部しなくてよかったと思ったほどでした。
そんな彼とも、毎月1回居酒屋で飲む機会があり、若者のスポーツとして楽しさが広がることを期待して、柔道の話をすることがあります。

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