2007/12/11  0:25

いのち育む島  書き物 エッセィ小説等



このたび最優秀賞を頂いたエッセイです。

先日、掲載された新聞社にリンクしたんですけど、携帯からは読めないという話だったので、アップしますね。
 



いのち育む島


島に家族三人で移住してきて、七年が過ぎようとしている。その間に一人娘は嫁に行き、私は可愛い二人の孫を授かった。
 
宮古に来てすぐの頃、海岸近くで、まあるいまあるいコロコロ鳴る実を見つけた。その愛らしさに、「いつか、もしも家を建てる事が叶ったならば、この実の生る木を植えよう。」と、思った。



今、我が家の庭には、その「やらうぎー」が十四本在る。藪のようになっていたこの土地に私たちが家を建てる、そのずっと前からある木々。初めて土地を見た時に、敷き詰めたようにまあるい実が落ちていて、私は一目で気に入ってしまった。ぐるりと土地を囲み、何十年の長きに渡り、以前の住人のお住まいをも見つめ守ってきたはずの木たち。一本一本の木は、姿かたちもそう美しいわけではない。歪で、苔むして、虫食いで、つる草だらけだ。それでも、木の下に立って見上げれば、絡みあった枝は腕を伸ばし掌を重ね合うかのように優しい。ちらちらとこぼれる木洩れ日の中に、次の世代になるべく小さな芽が出ているのを見つける事が出来る。全部が大きくなるわけじゃない。皆が緑の天蓋の一角になれるわけじゃない。でも、繋がってゆくはず…。

「やらうぎー」には、毎夜「オオコウモリ」のカップルがやってくる。たぶん、実を食べに来るのではないかと思う。キキキ…っと、鳴き交わしながらノソノソ動く姿はサルの様でもあるが、飛ぶと、これがまた大きい。耳の無い丸い頭の猫に翼を付けたようだ。ちょっと調べたところでは、翼を広げると六十センチ以上になるそうだ。市内に出るのに十分かからない我が家。その庭先に、夜だけそっと現れるこんな住人が居る。この大きな生き物が自然に繁殖して生きていける島って、いいよね。懐が深いなぁと、しみじみ感慨にふける。ただ、この感慨にふける時間帯が真夜中三時過ぎとあっては、一般の方々にとって「知られざる宮古島の自然」と言わざるを得ないのですが。

「知られざる宮古島の自然」が「知られないまま無くなっちゃった宮古島の自然」になるのが怖い。
人はどうしても「見えるもの」しか「見ない」。その上「見たくないもの」は「見えない」という技まで持っている。私にしたって、生活時間帯が少しずれていて、尚且つ、生き物好きの変わり者だったからオオコウモリに出会えた。実はひとつの空間をシェアして生きているんだって、知る事が出来た。もしも知る事無く、虫が付くからとか見苦しいからとか言って、安易に切り倒していたら、この無口な真夜中の住人はどうしていただろう。やはり、人知れず、黙って、「何処か」を探して飛び立っていたんだろうね。「何処か」は明らかに減ってきている。人が、人の「見えるもの」のために、「見えないもの」や「見たくないもの」を切り捨てていくから。ナイチャーの私から見ると、「見えないもの」の中に島の魅力が詰まっている。混沌として鬱蒼として息づくものの中に、それがある。良いも悪いも絡まりあってしか存在できないものを、残し伝えてゆく事のなんと難しい事か。どうすればいいのかは、私にも分からない。私は時々それらを感じて、切ない焦がれるような想いに駆られるだけだ。

「やらうぎー」の緑の天蓋の下で、孫たちが遊んでいる。蟻にたかられ、毛虫に刺され遊んでいる。この島で生まれ、この島で育ち、私の経験することの無かった宮古島をお前たちは生きているんだよ。お前たちの父さんは転勤族だから、このままずっと一緒に居る事は叶わない。いつかは島を出て行く。それも悪くは無い。外でいろんな事を勉強していらっしゃい。いつか、お前たちが島を想ってくれると嬉しい。その時、帰りたいと思える島であればなお嬉しい。お前たちは島で生まれた「島の子」だ。それを誇らしく思えるように、今日もナイチャーのばあちゃんはせっせと島の良い所を刷り込んでおこう。

私は、なかなか「みゃーくひとぅ」にはなれないけど、せめてこれから何十年かけてゆっくりゆっくり「島を想う島の人」になっていこうと思う。ゆっくりゆっくり育ちながら、多くの命を育む「やらうぎー」の天蓋に守られて。



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タグ: エッセイ 書く



2007/12/13  3:33

投稿者:無有

makiちゃん、
>無有さんが青い空を眺めながらゆったりと一日を過ごしている
>そんな景色が目に浮かびます。

(=^▽^=) 起きるのが11時だから、3時くらいまでは
けっこう忙しい。
陽のあるうちにやるべき仕事があるからね。
夕焼けの頃が、一番ゆったりしてるかな〜。
普通の家庭とは、逆だよね。(*^∀^*) 

離島も良いよ〜!
めざせ沖縄全島制覇!

2007/12/12  21:06

投稿者:maki

エッセイ読んでみたかったからアップしてくれて嬉しいです。
なんだか読んでいるとそこにやうらぎーの木が生えて無有さんが青い空を眺めながらゆったりと一日を過ごしているそんな景色が目に浮かびます。

そんな宮古へ私も一度行ってみたいなあ・・

http://orange.ap.teacup.com/3876/

2007/12/11  21:23

投稿者:無有

kiraちゃん、

孫たちの転勤が決まりかけてたからね、この時。せつなかったよ。
感情に流されないように、抑えて書くように心がけた。

>私もやっと夢叶う日がきた。
>いつか無有ちんの様にその土地に馴染んでいきたいと思う。

あせらず、ゆっくり、ゆっくりね。
「溶け込もう」なんて思わずに。
「居ても違和感が無い人」辺りを狙って、マイペースが
結局、一番いいのかもね〜♪
(*^_^*) ふぁいと♪



2007/12/11  19:54

投稿者:kira

無有ちん
読ませてくれてありがとう。
なんでかわからんが、最後まで読んで、目尻に涙が溜まった。
こぼれ落ちるほどではなく、じわーっとにじんだ。
私もやっと夢叶う日がきた。
いつか無有ちんの様にその土地に馴染んでいきたいと思う。





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