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2010/4/10

『倫敦から来た男』  映画道

倫敦ロンドンから来た男』
THE MAN FROM LONDON

2008年ハンガリー・ドイツ・フランス映画 138分
脚本・監督・製作補:タル・ベーラ
共同監督・編集:フラニツキー・アーグネシュ
原作:ジョルジュ・シムノン  脚本:クラスナホルカイ・ラースロー
撮影監督:フレッド・ケレメン  音楽:ヴィーグ・ミハーイ
出演:ミロスラヴ・クロボット(マロワン)、ティルダ・スウィントン(カメリア)、シルテシュ・アーギ(ブラウン夫人)、デルジ・ヤーノシュ(ブラウン)、ボーク・エリカ(アンリエット)、レーナールト・イシュトヴァーン(モリソン刑事)、パウアー・ギュラ(バーテン)、ラザール・カティ(肉屋の妻)






果てることない海のそば。静かに生きる鉄道員のマロワン。彼は、毎晩「ガラスの檻」のような制御室に登り、漆黒の港と駅を見下ろしている。ある夜、彼は偶然にも倫敦から来た男・ブラウンが犯した殺人の現場を目撃してしまう。そして、殺された男が持っていたトランクを海から拾い上げると、中には大量の札束が入っていた。濡れたお札を一枚ずつストーブで乾かし、再びトランクに丁寧に戻す。マロワンはその事を警察に届けたり同僚に話したりはしなかった。朝になり、一日の仕事を終えたマロワンは、ホテルにある馴染みのカフェに立ち寄り、裏路地を通って帰路についた。食事を済ませ、妻と少し会話をし、午前中の光がまぶしい寝室のベッドにもぐりこむ。彼はいつものように過ごして、眠りに落ちた。しかし、もはやすべてがいつもと同じではなかった……。【公式サイトより】

『ヴェルクマイスター・ハーモニー』のタル・ベーラ監督が、「メグレ警視」シリーズでお馴染みジョルジュ・シムノンさんの同名小説を映画化。

す、すごすぎる。
公式サイトには『選挙』『精神』の想田和弘監督の「離乳食みたいな映画ばかり観て喜んでいる現代人に対する挑戦状だ」というコメントがあったが、確かに退屈に感じる人もいるだろう。だが、私はいつになく画面に惹きつけられた。

まず船が映し出され、右から光が当たり、左側は影となっている。
カメラはゆっくりと上方へ向かうが、窓枠らしきものが横切るため、視点が船の対面にある建物にあると分かる。そこから我々は主人公マロワンとともにとある殺人事件を目撃することとなる。
そのモノクロームの映像の見事さ。
特にマロワンが制御室から事件現場に向かうシークエンス。マロワンが画面から消えた後、波が3回打ち寄せ、やがてトランクを手にしたマロワンが戻ってくる。
望遠でもくっきりと一連の出来事が長回しで捉えられ、最初の船からも分かるように光と影の計算がしつくされているのが分かる。

この最初の夜の出来事でおよそ30分。
その間、倫敦から来た男たちの会話やトランクをめぐって争う声などがあるのみで、台詞らしい台詞はほとんどない。主人公のマロワンにいたっては一言も発しないという有様。
このマロワン、最初の登場シーンもそうなのだが、ほとんどが背中から映し出されていく。男は背中で語るのだと言わんばかり。これほど観客に顔を見せない主人公も他に例がないのでは(笑)。

そのマロワンも大金を手に入れたことによる不安や焦燥感が募り、ブラウンにつけられていることに脅え、娘アンリエットに床掃除をさせている肉屋の妻に怒鳴り込んで行ったり、妻と激しく口論したりもする。
挙句、ブラウンを手にかけ、小屋に閉じ込めて自首をする。
その後、刑事はマロワンをともなって小屋に向かい、ブラウン夫人もその後をついていく。ここでなぜか刑事は小屋を確かめた後、再び鍵をかけ、マロワンは特に罪を咎められることもなく終わってしまう。ちょっとその点だけは引っかかったが、その映像美に酔い痴れた2時間18分であった。


★★★★

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