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2007/12/13

『君の涙 ドナウに流れ ハンガリー1956』  映画道

『君の涙 ドナウに流れ ハンガリー1956』
SZABADSÁG, SZERELEM/CHILDREN OF GLORY

2006年ハンガリー映画 120分
監督:クリスティナ・ゴダ  製作:アンドルー・G・ヴァイナ  
原案・脚本:ジョー・エスターハス  脚本・編集:エーヴァ・ガールドシュ
脚本:ゲーザ・ベレメーニ、レーカ・ディヴィニ
撮影:ブダ・グヤーシュ  音楽:ニック・グレニー=スミス
出演:イヴァーン・フェニェー(サボー・カルチ)、カタ・ドボー(ファルク・ヴィキ)、シャーンドル・チャーニ(ヴァーモシュ・ティビ)、カーロイ・ゲステシ(水球チーム監督)、イルディコー・バーンシャーギ(カルチの母)、タマーシュ・ヨルダーン(カルチの祖父)、ヴィクトーリア・サーヴァイ(ハナーク・エステル)、ツェルト・フサール(ガール・ヤンチ)、タマーシュ・ケレステシュ(アーチュ・イミ)、ペーテル・ホウマン(フェリおじさん)、ダーニエル・ガーボリ(カルチの弟ヨージカ)、ローベルト・マールトン(水球選手コンポー)、コルネール・シモン(水球選手バーロー)、クリスティアーン・コロヴラトニク(水球選手フランク)、アンタル・ツァプコー(水球選手プロコップ)、ゾルタン・セーチ(水球選手ベーツィ)、ブルチュー・セーケイ(水球選手ペターク)、ゲルゲイ・キシュ(水球選手ミシュリン)、ヴィクトル・パヤーン(水球選手ボラコフ)、アッティラ・ヴァーリ(水球選手ピソフ)、ペーテル・ビロシュ(水球選手ポリャコフ)、イシュトヴァーン・ゲルゲイ(水球選手ルキナ)、アティッラ・バーラニ(水球選手ジューロフ)、ヤーノス・シュヴィンメル(ナジ・イムレ)、ペーテル・ヴェーグ(バラージュ神父)
※役名は姓・名の順、役者名は名・姓の順




1956年モスクワ。ソ連対ハンガリーの水球の試合が行われるが、ソ連びいきの判定にハンガリーチームの主力選手カルチがボールを審判にぶつけて試合は中断してしまう。ロッカールームでもぶつかり合う両チーム。帰国したカルチは秘密警察AVOに呼ばれ、“フェリおじさん”と名乗る男にソ連の同志に歯向かわないように脅される。帰宅したカルチを母と弟、祖父が出迎える。ラジオのニュースではポーランドで民衆が立ち上がったことを伝えていた。ブダベスト工業大学では共産青年同盟が集会を開き、ポーランドのニュースは作り話だと訴える。そこへ現われたセゲド大学の独立学生連盟の代表が話をしようとするが、場内は大混乱。女子学生のヴィキは「彼に話をさせて」と声を上げる。翌日、カルチが友人イミを工業大学に訪ねると、学生たちはMEFESZ(ハンガリー独立学生連盟)を結成していた。カルチはヴィキに目を奪われるが、彼女に冷たくあしらわれる。10月23日、民衆はソ連軍の撤退と改革派の指導者ナジ・イムレの復権を訴えてデモ行進を行う。チームメイトのティビと野次馬気分で参加していたカルチは、メルボルンオリンピックの合宿生活に入ることになっていたが、ヴィキの姿を見かけて国会議事堂までついていく。そこにはカルチの祖父と弟の姿もあった。彼らを帰そうとして電気が消されるが、新聞などに火をつけて松明のように灯し、国歌を歌いながらナジの名を呼び続ける。ところが、ようやく現われたナジが「同志よ」と呼びかけると非難の声が上がる。学生連盟のリーダー、ヤンチが自分たちの要求を放送してもらうため、ハンガリーラジオに向かうが、AVOの裏切りにより交渉団が逮捕され、集まってきた民衆には発炎筒が投げ込まれる。混乱の中、突然放たれた銃弾がイミを襲う。イミを抱えて泣き叫ぶヴィキ。カルチは現われた救護隊員がAVOの偽装であることを見抜き、ヴィキとともに彼女の家に逃げ込む。イミが死んだことで「この国で許されているのは沈黙だけだ」とヴィキを責め立てるカルチ。ヴィキは両親がAVOに殺されたことを打ち明けて反論する。翌朝、イム・ナジチが首相に就任したという発表があって喜ぶ二人だったが、町にはソ連軍の戦車が通り、火炎瓶を投げつけた市民は撃ち殺される。ヴィキは戦いに行こうとするが、カルチはオリンピックの夢を打ち砕かれたくないとチームが合宿をしているホテルに向かう。チームに戻ったカルチだったが、彼の気持には変化が生じていた。結局、監督やティビの制止を振り払い、学生連盟本部に向かう。ヴィキに再会したカルチは彼女を自分の家へと連れて行く。息子の変化に戸惑いを隠せない母。カルチは母を心配させまいとチームを辞めたことは隠しておく。夕食後、ヴィキはカルチにAVOに「抱かせたら両親を釈放する」と言われて騙された過去を告げる。カルチはそんな彼女を抱きしめ、二人は初めて結ばれる。翌朝、ヴィキは母親の気持を察し、カルチに何も告げずに家を出る。カルチは彼女を追いかけて家を飛び出す。国会議事堂前でヴィキの姿を見つけて駆け寄るカルチだったが、突然、銃声が鳴り響く。市民に向けて無差別に発砲するAVOを追い詰めたヴィキたちは銃を向け合う。両者を止めようとした神父が撃たれ、ヴィキも左腕を撃たれる。カルチは彼女を守るため初めて人を撃ち殺す。その後もバリケードを作ってソ連軍の戦車を追い込んで火炎瓶で炎上させるなど戦闘が続くが、ラジオはソ連軍の撤退とAVOの廃止のニュースを伝える。水球チームも2日後にメルボルンに出発することになり、ヴィキは母親の形見のネックレスを渡し、オリンピックに行くように言う。カルチは幸福の時計を渡し、チームに戻る。監督やチームメイトは様々な思いを抱えながらも金メダルを取るためにカルチを迎え入れる。バスは夜の道をプラハへと向かう。選手たちは眠りについていたが、信じられない光景を目の当たりにする。撤退したはずのソ連軍の戦車が再びブダペストを目指していたのだった。カルチはバスを降りようとするが、ティビは彼を殴って気絶させる。学生連盟本部ではカルチの子供を妊娠したエステルが勝ち目のない戦いから逃げ延びようと言うが、そうとは知らないカルチはアメリカ軍が来ることを期待して戦い続けることを主張。ソ連軍が攻めてくる中、爆発によって火傷を負ったエステルが命を落とす。ハンガリーラジオは世界に向けてSOSを叫んでいた。祖国の様子が気がかりな水球チームの面々は亡命を考えていたが、監督の呼びかけにより祖国のために勝つことだけを考えて試合に臨む。そして準決勝。ハンガリーチームはソ連チームと対戦する。その頃、ヴィキは捕えられ、フィリおじさんに裏切り者の名前を書けば釈放してやると告げる。

今年300本目の作品にして文句なしのベスト1。

ハンガリー動乱とメルボルンの流血戦という史実を背景に一組の男女の運命を描く。
当時12歳だったプロデューサーのアンドルー・G・ヴァイナさんは、その試合が行われた日に亡命し、アメリカに渡ったとのこと。現在までに『ランボー』、『トータル・リコール』、『ダイ・ハード3』、『ターミネーター3』などのハリウッド大作の他、『ミュージックボックス』(アーミン・ミューラー=スタール!)、『スカーレット・レター』や『ニクソン』なども手がけている。
9月に開かれたあいち国際女性映画祭では『チルドレン・オブ・グローリー』のタイトルで上映され(ちなみに原題は『自由、愛』という意味)、観客賞を受賞。夏にブダペストを訪れたこともあって是非とも観たかったのだけど、都合がつかず。劇場公開されてようやく観ることができた次第。

映画の最後にマライ・シャーンドルというハンガリー人作家の“天使のうた”からの引用があるのだけど、その中の、

 自由の国に生まれた者には理解も及ぶまい
 だが私たちは何度でも繰り返し噛みしめる
 自由がすべてに勝る贈り物であることを

という一節にすべては尽きる。
本篇中、何度も心を揺さぶられたが、最後の最後にガツンとやられた。

中では10月23日のデモ行進のシーンが圧巻。
そこでヒロインが当時の国旗にデザインされた紋章を切り取るのだけど、その穴の開いた国旗がソ連からの独立を表す自由の象徴。この旗は現在も国会議事堂の前に翻って犠牲者を追悼している。
実物を見たときも当時の民衆に思いを馳せ、そのことを忘れないハンガリー国民の思いに胸を打たれたものだが、こうして映像として見せられると迫ってくるものがある。もちろん、自由の国に生まれた私には理解も及ばないことだが。
とにかく、このシーンから引き込まれ、片時も目を離すことができなかった。

役者陣も主演の2人をはじめ、脇役にいたるまでそれぞれの人物のドラマを感じさせる。
また、1956年のブダペストを再現した映像も素晴らしく、戦車や衣裳、その他小道具など細部にも目が行き届いている。
水球シーンの撮影も素晴らしく、歴史ドラマであると同時に優れたスポーツドラマにもなっている。水球のシーンにはシドニー、アテネと連覇しているハンガリー代表チームの選手が参加するなど、これまた本物志向。

ブダペストがドナウの真珠だとしたら、この映画はハンガリー映画の真珠。
そしてその表面にはいささかの瑕瑾(かきん)もない。

とりあえず「RUSZKIK HAZA!」というハンガリー語は覚えた。
ちなみに意味は「ロシア人は帰れ」。いつ使うんだ(笑)。


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