その7からの続き。
Sweeperに回った僕ちんを待っていたのは、Cの世話だ。普通のハイカーの半分以下、僕ちんの5分の1くらいのスピードしか維持できない彼女を、昨日の段階でトレイルヘッドへ送り返そうかどうしようか、相当迷った。
だが真剣な目で渡来することを誓った、その意思の強さを信じて続行させた。
(←下から見上げた最後のケーブル部分。うまくいけば、約25分で登れる)
しかし意志の強さは、僕ちんの方が必要だった。というのも、ここから約1時間は、ハーフドーム登山で僕ちんが一番嫌いな、Stepsという部分だからだ。
ここは石段が数百段続き、途中は会談もトレイルも消える箇所があるので、 →続きは、ケーブル、をクリック

(ケーブル登りよりもつらいSteps→)
勝手に見当をつけて岩の上をスルスルと登らなければならない所もある。
おまけに日陰がほとんどなく、灼熱の太陽光線にもろにさらされる。拷問だ。
Stepsは以前はこれほど石段の数が多くなく、石段の高さは50センチ近くあるものもあって、膝に来ることがあった。ケーブルよりもここの方が嫌いな僕ちんの鬼門だった。
Cは遅々として動かない。酸素が薄いのが如実に分かる。石段を10段上がって、3分くらい休むペースで、Cをゆっくり上に引き上げていった。
花崗岩の白さが、陽光を反射してまぶしいなんてもんじゃあない。石段を1段1段踏みしめるたびに、めまいがしてくらくらしそうだ。風も強くなってきた。
女性としては、人一倍体格がいいCは、Stepsを半分も超えないうちに座り込んでしまった。こまったな〜。
だが約1時間でStepsを登りきり、サブドームの上に出た。するとケーブルが見えてきた。Cが息をのむのが分かった。

(←Stepsを終えてやっとたどり着いたサブドーム)
もう午前10時を回ってしまった。早く登り始めないと、バレーから上がってくる客たちで、身動きできなくなる。ハイキング・ポールを岩陰に隠し、5分ほど休んだだけでケーブルを登ることにした。
ケーブルの真下へ行き、冷たいラインを2本、両腕で握り締める。いよいよここからだ。僕ちんは慣れてはいるものの油断はやはり禁物だ。
イボつき軍手の僕に比べ、かっこいいレーサー用の黒い皮手袋をつけたCだったが、ケーブルを登り始めてわずか2分で動きが止まってしまった。
やれやれ、これでは45分ほどかかりそうだな、とやや絶望的な気分になって、僕も彼女の後について登りだした。
救いは、まだ降りてくる人が少なく、登りだす人もほとんどいなかったことだ。これが午前10時半を越えたところから、ケーブルは一気に大混雑状況に陥り、登るだけで45分以上かかることがある。

(サブドームの上には、ケーブルを眺める人たちが集まっている→)
ケーブルの角度は、真下から見るとほぼ垂直に見えるが、登り始めてみるとそうでもないことが体感できる。
ケーブルを両手に握るものの、なるべく足の力で登り、手はケーブルにそえておくだけにしたほうが長続きする。数メートルおきに渡された中板までたどりつき、数分休んでまた1つ上の中板を目指して、ぐいぐいケーブルを登る。
この辺に来ると高度障害が出ることが多く、息切れや頭痛がひどくなることがある。
後から登ってくる人にケーブルを譲ろうとするが、お互いゼエゼエとあえぎながらなので、先を譲られても断る人が多い。そりゃあそうだろう。
Cもつらそうだ。あまりにCの速度が遅いので、もしかして、彼女は途中であきらめて降りるんじゃないか、と心配になってきた。果たしてCは、無事にケーブルを登りきれるのだろうか。
その9へ続く。

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