
▽まったくタイプの違う僕とKさん
世の中には頭の上がらない、怒るに怒れない人というのが必ずいる。僕の場合、山へよく一緒に行くKさんがそうだ。
Kさんとはかなりの年齢差があり(僕がずっと年上)、性格も出身も家族構成もイデオロギーも山登りのタイプもまったく違う。
彼は事を起こす前、あらゆる情報を集めに集めて綿密な計画を立てる。鉄の意志の持ち主で、1人でクマの出る山の中へ入っていく。超菜食主義者でもあり、UL(ウルトラライト)という軽い装備での山行を信条としている。
僕はといえば、計画はズボラで豆腐のような意思しか持ち合わせておらず、 →続きを読むをクリック

クマの鼻息が聞こえただけで飛び上がって逃げるタイプ。肉は節操なくバクバク食うし、いつも田舎くさい重い装備でKさんに笑われている。
▽たった一言が運の尽き…
しかしこの男とは、自分でもよく分からないがミョーに気が合う。思い起こせば数年前、最初は仕事を通じて偶然に知り合った。一見、真面目そうな会社員のKさんと、彼のオフィスで何の気なしに交わした「今度の休みにはどこかへ?」というたった一言が、運の尽きだった。
お互いヨセミテへよく行くという話から、とんとん拍子に一緒に近場へハイキングへ行くことになった。気づいたら、死にそうになりながらマウント・シャスタの登頂登山へ拉致・連行されたり、挙句の果てはアメリカ本土で1番高いマウント・ホイットニーへもふらふらになりながら登頂させられたりした。

そのころからUL志向を深めていったKさんからは、軽量装備や熟練した山の歩き方、写真撮影や食についてなどいろいろなことを教わった。お互いにいつも憎まれ口をたたきあうが、不思議とけんかしたことがない。
▽Kさんが帰国っす
妻には「あんたたちはBrokeback Mountainに行ってるんじゃあないでしょーね?」と疑いのまなざしを向けられていたと思うが、もちろんそんなことはない。
その彼が今回、日本へ帰国することになった。う〜ん、残念。といっても彼が帰国することなんかどーでもいい。とっとと帰ってくれ。さよーならー。
何が残念って、もう装備を安く分けてくれる人がいなくなる。僕にとってはKアウトドア商店から破格値で卸してもらう最先端装備だけが楽しみだったのだが、もうそれが手に入らなくなる。困ったなー。どうしようかなー。

なんてことはなくて、アメリカやメキシコの大自然をこよなく愛しているKさんがいなくなることは、やはり僕の人生において大きな損失だ。Kさんにとってももっとアメリカの山や自然に挑みたかったろう。もっともKさんは、こんな腐れ縁の僕ちんと離れられることを喜んでいるのかもしれない。
この寂しさを紛らわすための山行で、2人はどこへ向かったのか。
その2へ続く。
※2枚目の写真はKさん撮影

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