
昨年5月にお1人でマウント・シャスタツアーに参加されたMさんが、リピーターとして再び山へ戻ってこられた。これまで来られたお客様の中でもMさんは特に優しい気遣いがあるお客様だったので、こちらもよく覚えている。
前回同様、お1人でゆったりとシャスタを楽しみたいとのことだったが、僕の山仲間のKさんとひょっこり再会したり、これまでお客さんを案内したことのない鍾乳洞を探検したりと、今回盛りだくさんのツアーとなった。

今回は1月11日から3泊で申し込まれてきた。偶然にもちょうどこの日から僕は、 →続きを読むをクリック

シャスタでの定宿であるストーニー・ブルック・インのお手伝いをすることになっていた。このため前回同様にお1人様だけのご案内となったものの、割増料金はいただかなかった。
マウント・シャスタ近辺は、年明け早々に襲ってきた冬の嵐のために前日まで断続的な停電が続いていたらしい。いまだにアメリカの秘境、あるいはカリフォルニアのチベットといわれる所以だ。
空港でMさんを迎えて再会を喜び、一路マウント・シャスタへ。晴れ渡っていればI-5のCorningを過ぎた辺りから真正面に、真っ白なマウント・シャスタの姿が見えてくるはず。しかしあいにくの天候で前方は曇り空だった。
Mさんは日本での生活や仕事、前回来られてからシャスタ再訪に至るまでの体験などを、あいかわらずの優しい口調で話して下さった。いつも気遣いを忘れない人で、おこがましいが波長がよく合うというのか、車中でも飽きることなく話ができた。前回同様、かえって僕の方がリラックスさせてもらえる旅となり、申し訳なかったが。

天候もあまりよくないので、11日はマウント・シャスタの定宿、ストーニー・ブルック・インへ直行した。インではいつもどおり、オーナーのスサナ(弘美)さんが温かく迎えてくれた。この日からはほかに泊り客がいなかったので、スサナさん手作りの夕食までごちそうになってしまった。
前日までの停電にもめげず、インではキャンドルライトと暖炉の照り返しのロマンチックな灯火の中で、ゆったりとした夜を過ごしたとのこと。このため食後はスサナさんが気を利かせてくれて、ロビーの電灯を消しキャンドルライトのくつろぎの時間を設けてくれた。

テーブル上のピンクのバラが、キャンドルライトの淡い光に照らされて幻想的に浮かび上がる。これまでの体験や人生と転機、ポジティブな気持ちの保ち方や将来のことなどについて、Mさんとスサナさんがゆったりとソファーに座り込んで話し込んでいる。
暖炉の柔らかな照り返しに浮かぶ2人の話声を聞いていると、一瞬、ゴールドラッシュの時代にタイムスリップでもしたかと思うような静かなときの流れを感じ、眠気に襲われた。

翌朝は、郷愁漂うShasta Valleyを貫くOld Stage Roadのドライブを楽しんだ。I-5と並行しているこの道は、オレゴンとをつないでいた旧道。牧場や昔ながらの旧家、農場など牧歌的な風景が広がる。歴史深いシャスタ周辺の違った一面が楽しめるので、ここはリピーターの人を案内するにはもってこいだ。
ゴールドラッシュに沸いたYrekaの古きよき時代をしのばせるダウンタウンなどをうろついたあと、スウェット・ロッジへ向かった。この日は冬場だったこともあり、観光客はほとんどおらず。顔見知りのスタッフやメディスンマンのウオーキング・イーグルらがにこやかに迎えてくれた。ゆったりと魂の浄化の儀式を堪能できた午後だった。

Mさんが今回シャスタを再訪されたのは、このスウェット・ロッジにもう一度参加したかったのとスサナさんのセッションを受けたかったのが主な理由だそうだ。スウェット・ロッジはいつになく熱く、暗闇の中での歌とダンス、祈りが続く。ウオーキング・イーグルからは「すべてのネガティブな気持ちをこのロッジ内に捨て去り、ポジティブな気持ちを空に投げ上げろ。そうして振り落ちてきたピュアなポジティブな心だけをもう一度天から受け取って、家路につけ」とのメッセージをもらった。
汗、熱気、怒涛のドラム、エネルギーの塊のような歌声が、漆黒の闇に渦巻く。観光客が少ないと、ウオーキング・イーグルも祈りに集中でき、インテンシブな儀式を堪能できる。

紅潮した面持ちでロッジから出た後は、これまでいったことがなかったマウント・シャスタ・シティのTrinity Cafeでのしゃれた夕食を楽しむことができた。
宿へ戻ると僕の山仲間のKさんと友人が来ていた。Kさんは僕が来ていることを知らなかったらしく、驚いた様子。でも僕ちんは君が来ることを1週間以上前から知ってたもんねーだ。
前夜と同じく食後は暖炉の前で、人生や男女の気持ちの持ち方の違い、シャスタの自然などについてどっぷりと話し込んだ。

1月13日は日曜日。マネジャーのJuanitaお手製のブロッコリーパイの朝食を楽しんだ。シャスタの中腹にあるバニーフラットや、シャスタバレー対岸のキャッスル・レイクへMさんを案内したかった。雪がどれだけあるか分からなかったが、スサナさんがインの4WD車を出してくれたので、スサナさんとKさん組、僕たちの計5人でドライブを楽しむことにした。

晴れ渡った日差しの下に、シャスタが美しく生える。やっぱこうでなくっちゃ。ブラック・ビュートも雪をかぶってホワイト・ビュートになっている。残念ながら懸念したとおり、バニーフラットへいたる数マイル手前で雪のため道のゲートが閉じられている。仕方がないのでシャスタが見える辺りに車を止め、しばし雪の中のハイキングを楽しんだ。

春や夏はバニーフラットやパンサーメドウズを目指すことだけを考え、沿道を気にすることは少ないが、人の少ない雪景色の森を歩くのは冬ならでは。奥まった観光スポットには足を踏み入れられないが、それでもシャスタでは四季折々、ゆったり過ごすことができるのが魅力だ。
午後はシスキュー・レイクへ逆さシャスタを見に行った。残念ながら湖面が波立っていたので逆さの姿は見られなかったが、帰り道で“クマ”と出くわした。といっても本物のクマではない。静かな湖畔の森の中を歩いていると、前方約50mのところを黒い影が

横切るのが見えた。
先を歩いていたKさんたちが「あれ、クマ???」と素っ頓狂な声を上げた。目を上げると、体高80センチくらいの真っ黒な毛むくじゃらの塊が、左方向から全速力で右側に抜けていった。まさか、と思ったがありえないこともない。追い払おうと大声を上げ、手を打ち鳴らす。すると毛むくじゃらの塊が右方向から戻ってきて、こちらをのぞいている。

一瞬総毛立ったが、落ち着いてよく見てみるとなぁ〜んだ、犬じゃん。脅かすなよ、まったく。クロスカントリースキーでもしていた人が連れていた犬だろう。女性が犬の後を追いかけて、通り過ぎるのが見えた。何度であってもクマだけはやだなー。ほんと、犬でよかった。
Kさんたちはこの後ベイエリアへ向けて旅立った。僕たちは夕刻までゆっくりすごし、Mさんはスサナさんの個人セッションを受けた。Mさんが寝入ってしまったようだったので、その間に戻ってきたスサナさんが手作りの肉団子鍋を用意してくれた。これはうま

かったっす。まったく、ここへ手伝いに来るといつも数キロ太ってしまうくらいご飯がおいしい。
食後はタロットカード遊びを楽しんだ。ほんと、真冬ならではのゆったりとした時の中で、シャスタもストーニー・ブルック・インもスサナさんも独占したような豪華な旅となった。
最終日は午前中にストーニー・ブルック・インを発ち、SFへの帰り道、リサーチをかねてシャスタ・レイクにある鍾乳洞を訪ねた。この鍾乳洞探検は盛りだくさんで楽しかっ

た。まずI-5をはずれ湖畔へ向かって森を数マイル抜ける。ビジターセンターでチケットを買い、まずはボートに乗る。約10分の“航海”後、上り坂のハイキング。このあと山の中へ向かってバスの旅。ビジターセンターを出てから約30分で洞窟入り口に到着。
このあとは約600段の階段を含む約1時間のウオーキングツアーがあり、鍾乳洞の歴史や見所を案内してくれる。これは回を改めてブログに紹介する。

鍾乳洞から戻り、SFへむけて約4時間のドライブを楽しみ、Mさんをホテルへ送り届けた。Mさん、本当にありがとうございました。回れるところが少なかったけど、楽しんでいただけたかな。その分、夏に来るお客さんが過ごせない貴重な時間をストーニー・ブルック・インで体験できたし、かえってこちらが楽しんでしまった旅だった。
Mさん、どうかまたいらしてくださいね。

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