菜の花の沖 三 司馬遼太郎全集44

2016/1/31  18:19 | 投稿者: masuko

 文庫本で6冊分。頑張りましたね。やっと読了。

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 全集の44はいよいよゴローニン事件だと思って読みだしたが、嘉兵衛さんが出てくるのは196ページ。そこまではずっとずっとロシア情勢やそれに対する日本の反応。どうしてゴローニン事件が起きたのか、そしてどうなったか・・・その因果関係を詳しく詳しく、綴っていく。
 この時期のロシアのそこそこの人々は外国関係のことは記録に残し書物にして、翻訳してヨーロッパの国々向け販売するという習慣があったようで、かなりの資料が残っているようだ。

 しかし、嘉兵衛さんには感服した。

 ロシアの船に拿捕された時に、こうなってしまったのは運命、おかしな形でこじれてしまったロシアと日本の関係を自分が解決しよう、ゴローニンを釈放できるようになんとか自分がその下準備をしようと進んで捕虜となる。
 そして彼を捕まえた直接の指揮官であるリコルドとなんとかそういった込み入った話ができるまでの会話力を身につける。これが嘉兵衛さんだけの力ではない。リコルドという人も立派な人で、嘉兵衛が尊敬できる人であることをすぐに見抜き、彼と意思疎通をしようとして嘉兵衛さんとリコルドの二人言語みたいなものを作り出していく。
 二人ともに手記を残しているから、自分はこういって相手はこういったという部分を付き合わせていけば、お互いに相手の意図を理解していたとか、少し違ったとらえ方をしていたとか一目瞭然だ。
 どちらの手記を読んでも、二人が深い信頼、友情で結ばれていたことがわかる。

 そしてゴローニン事件は解決される。

 それにしても嘉兵衛さんはただの町人じゃないか。船頭、商人だ。それなのにこの時期に国というものを考え日本人としての立場を考え、さらに他国の事情も鑑みて行動できる、自分のふるまい方を考え決定することができるというのは本当に凄い人だ。ゴローニン解放について日本側への交渉を嘉兵衛さん一人に一任するというように事を運んでいくのは容易なことではなかった。ちょっとして刃傷劇場的なことも嘉兵衛さんはやってのけ、リコルドを脅しつつ信頼させていく。もちろん、いざというときは切腹とまで考え詰め行動している。日本人としてみっともない形で行動したくない、卑怯なこともしたくない・・・そこの部分が文化の違う外国の人には微妙に理解してもらいにくいことだということもわかるからこそ、これが日本人の矜持だ、方法だということをどうにかしてわかってもらおうとして、悪戦苦闘する。
 もしかしたらこの40年後に起きるペリーの黒船事件に発する幕末の志士達の考えや行動より一枚も二枚も上手かもしれないなあ。

 日本に戻り、日本の役人と交渉する嘉兵衛さんが面白い。日本人の役人との会話の方がリコルドとの会話よりよっぽど話も気持ちも通じず、困難だとぼやいている。

 コミュニケーションというのは結局そういうことだね。いかに互いに真心があるかってことだ。

 司馬遼太郎さんにはまいりました。これだけすべてを調べ尽くすというのは容易なことではないだろうね。でも、まあ「竜馬がゆく」とか「坂の上の雲」とか・・・読む予定はありませんよ!!

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