さい果て 津村節子

2012/9/27  18:56 | 投稿者: masuko

 津村節子さんの文庫本はなかなか見つけられない。書店に置いてないことが多い。先日、他のものを探していて、ふと目にはいりこれは珍しいと買っておいた。
 「春遠く」「風花」「さい果て」「玩具」「青いメス」の5篇の連作小説で、「玩具」は芥川賞を受賞している。
 題材には夫の吉村昭氏との新婚のころの話を使っているが、私小説ではない。登場人物の志郎と春子は仕事に失敗して東北や北海道に衣料品の行商に行く。これは実際に吉村・津村夫妻の経験したことではあるが、志郎は小説を書きたいと思っていても、春子は小説を書こうとしている妻には描かれていない。志郎という男の心がつかめず、その愛を求め、心を痛めてさまよう女心が切なく表現されていて、とても共感できた。志郎ほどではないにしろ、たいていの男は自己中心的で勝手で、妻のことなんかより自分の興味や趣味の方に気を取られている時間が断然長いという生き物ではないだろうか。その点、女は夫や子どものことがまず第一で、自分のことは二の次ということが自然にできる生き物だと思う。まあ、そういう男女像というのも、ずいぶん変わってきているのだろうけれどね。
 吉村さんが何の賞も獲得できずにいるころ、妻の節子さんは芥川賞を受賞。そんな小説家同士の夫婦というのもずいぶん葛藤があったことだろう。その辺の所は節子さんが「重い歳月」という小説にしているようだ。また、探してみよう。
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