BS世界のドキュメンタリー
『汚染される北極圏』
NHK BS1 6月12日(日) 23:10〜23:59
NHK BS1 6月23日(木) 19:10〜20:00
http://www.nhk.or.jp/bs/wdoc/
最近の調査で、カナダ北部やグリーンランドなどの北極圏に暮らす先住民族の女性から、世界で最高濃度のPCBなどの有害物質が検出されていることがわかった。
北米、ロシア、ヨーロッパの都市部で過去30年間に排出された有害物質が北上する大気や海流に乗って北極圏にたどり着き、プランクトンにとりこまれた。さらにプランクトンが魚に食べられ魚がホッキョクグマに食べられる食物連鎖のなかで濃縮され、ホッキョクグマを食材としてきた先住民族に高濃度で取り込まれたという。
北極圏の知られざる汚染のメカニズムを探る。
Arctic Alert(原題) 制作:2005年
(番組紹介より)
★☆★
2000年7月26日、東京で
『海洋新世紀フォーラム』が開催されました。
テーマは、
”私達の経済・社会活動とも密接にかかわっている海域として、近年その存在が注目されている北極海。地球温暖化などの環境問題とのかかわり、資源・エネルギー開発や海路としての役割、海のほ乳類の生態など多角的な視点から討議を行い、私達と海が共存する、豊かな未来への指針を探ります。”
…というもので、赤祖父氏の講演もあるとのことで、参加してみました。
基調講演
●赤祖父俊一氏
『北極圏の自然現象と地球温暖化』
パネルディスカッション
●北川弘光氏
『未知なる海〜北極海の真実』1
北極圏航路の開発と必要性について
●宮崎信之氏
『未知なる海〜北極海の真実』2
バイカル湖の淡水アザラシに見る有機塩素系化合物の汚染など
●和泉雅子氏
『未知なる海〜北極海の真実』3
北極圏冒険の楽しみ
内容がてんこ盛りで散漫になってしまったり、もっと突っ込んだ内容も欲しかったというのもありましたが、全般的に興味深い内容のフォーラムでありました。
平日でしたが、会場は熱気に包まれて多くの方が参加されていました。(多くは年配の男性で、女性の数はごくわずか…)
レポートを拙サイトに掲載していたのですが(結構なヴォリュームだったかな^^;;)、サイト容量上の問題から現在は公開しておりません。
パネルディスカッションの1&2をかいつまんでご紹介すると…
◆
北極海は閉じた海なので、汚染が長くとどまるという特性を持っている。
◆シロクマとアザラシは、北極海の生態系ピラミッドの頂点に位置する。
(植物性プランクトン→動物性プランクトン→小動物…という形のピラミッド)
PCB、DDT、BHCなどの
有機塩素系化合物や内分泌攪乱ホルモンなどは、生態系の上記に行くに従って濃縮されるため、上位の水棲哺乳類に及ぶ影響は甚大である。
表層海水<植物プランクトン<動物プランクトン<ハダカイワシ<スルメイカ<スジイルカで比べると、
有機塩素系化合物の濃度は、なんと10万倍もの濃度になっている。
◆有機塩素系化合物は、主に
生物の脂肪の中に蓄積される。
(ちなみに、アザラシの脂肪分はイヌイットやエスキモーにとって重要な熱源)
◆海棲哺乳類の有機塩素系化合物汚染を緯度ごとにプロットすると、次のようになる。(かなり簡略化&表示がズレているかも。^^;;)
(緯度) (汚染濃度→)
90°N *
***
60°N ********
***************
30°N ********************
************
0° ******
*****
30°S ***
**
60°S **
*
90°S *
◆
北半球の中緯度で有機塩素系化合物による汚染が最も高い(日本の沖合付近)が、生産活動をしていない南氷洋のウェッデルアザラシも汚染されている。
◆北極海圏では、カラ海(バイカル湖がエニセイ川を通って流れ込む)のDDTとPCBの汚染濃度が最も高い。
カラ海>スバルバール諸島>カナダ・アラスカ沿岸
◆汚染物質について
DDT
殺虫剤として、木材などに多用。
PCB
軍事施設などで使用されていることが多いと思われる。
CHL、HCL
揮発性の殺虫剤。
アメリカなど先進国で大量に作られる。
安価なため、インド、東南アジアで大量に使われ、それが大気中に溶け込み、北極海圏に一様に流れ込む。
作るのは先進国で、使うのは後進国。
しかし、大気による移行で自分たちの上空を汚染するという、自分で自分の首を絞めている状態になっている。
上記の有機塩素系化合物は、水系(陸で使われる→地下水→河川→海)で影響が及ぶと考えられがちだが、それよりも
大気中に溶け込んで飛散したり生物に影響を及ぼす度合いの方が高い。
◆化合物の大気による移行
大気循環→主に
ジェット気流と大気温度差によって運ばれる。
◆ワモンアザラシの調査(ロシア白海沿岸ディクソン)
ディクソンの灯台には原子力電池が使用されていた。
現在は施設が放棄され、そのまま電池は放置されている。
現地の人達はそこに危険な物質があると知らされていない。
灯台跡から3m離れた所の放射能は1.4マイクロシーベルト、1mで8マイクロシーベルトであった。
(自然界の放射能量は0.03マイクロシーベルト)
◆『ユーラシア大陸の核汚染』(Illesh & Makarov 1992)
軍事・北極海の開発は資源の問題として重要。
核実験基地としての北極海と核廃棄物場としての北極海:ロシアには核最終処分場がなく、核廃棄物は北極海に投棄されているようである。
ロシアに核汚染や廃棄問題の認識をもっと持ってもらうことが、最重要課題かも知れない。
私がその時に抱いた疑問は…
◆
有機塩素系化合物は大気によって循環し、極地方に移行
アラスカの北の空にスモッグのような物が貯まっているのを見ることがあります。(
アークティック・ヘイズ)
中緯度から排出されたチリ、スモッグなどがジェット気流によって巻き上げられ、極地方に貯まる。
↓
何故、一度巻き上げられて極地方に貯まった物が、その環の中から外に出ていけないのか?(極渦)
でも、大気循環があるのならば、出ていくことも可能?
それとも比重などの問題で無理?
チリは日光を遮るので、地球温暖化には負のフィードバックということになると思われますが、現在存在するアークティック・ヘイズは温暖化にどの程度の影響を与えているのでしょうか?
アークティック・ヘイズが地上どのくらいの高さに貯まっているのか不明ですが、それらが地表の生態系に及ぼす影響はどのような物なのでしょうか?
また、それらの影響でイヌイットやエスキモーなど原住民の癌や化学物質過敏症の発症率の変化など様々な健康障害は起こっていないのか、もしくは今後起こる可能性はないのでしょうか?
◆
深層海洋水の汲み上げ
↓
海流や対流に及ぼす影響は?
上記の変化による温暖化の可能性は?
それによって引き起こされる海洋資源の枯渇は考えられないのでしょうか?
これらは既に解明されていることかも知れませんし、あれから5年の間に解明されたかも…。
北極海では野生動物界の汚染度トップ(^^;;)はシロクマやアザラシ。
それを食用としている北極圏の先住民族の人達から、高濃度の汚染物質が検出されるのも、(当然これは問題ですが)当たり前と言えることでしょう。
検出されるだけならまだしも、化学物質過敏症やその他の健康被害が危ぶまれると思うのです。
ことは北極圏で起こってはいますが、その多くは、我々が暮らす中緯度地域から排出されたもの。
巡り巡って北極圏に溜まっているのです。
夜光雲や真珠雲の出現率が増えたという話も聞きますが、これも高層大気中に溜まった有害物質による影響とも言われているとか。
オゾンホールもそうですが、今回取り上げられる汚染物質も極渦に溜まり続けていたら、我々の暮らす中緯度地域でも何らかの問題に成り得るかも知れません。

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