1月に迷い犬だった真っ黒のジャーマン・シェパードを保護。去勢されていないオスで、獣医へ連れて行くとフィラリアの成虫とデモデクスという完治困難な皮膚病が発見された。
手を尽くして飼い主を捜したが見つからず、MAC=McLO(真黒郎)と名付け我が家の子になった。
辛い治療や手術を受けた。彼は耐えた。
3月。「それはうちの犬だ」という人が現れた。
真黒郎の写った写真も持っている。子供が毎日泣いている。返してくれ、と。
SPCAにもHumane Societyにも、アニマルレスキューにも連絡したはずだ。ポスターも作って貼った。クッキーとも親友になった。私たちをこんなに信頼している。
だから、この子はもううちの子だ。返さない。
激しいやりとりが始まった。先方は私たちを泥棒だ、と言った。
さんざん探したのに、と。私たちは向こうが嘘を付いていると思った。
獣医も施設も警察も弁護士も巻き込んで大騒ぎになった。
法律的には犬の「所有権」はあくまでも元の飼い主にある、と言われた。紛失したバッグと同じだ、と。でも今回のケースは微妙だった。犬は健康ではなかったし、この寒い所で外飼いされていた様子。もしかしたら飼い主の虐待を証明できるかもしれない。警察も、これは民事ケースだから警察が無理矢理真黒郎を連れて行くことはないと言ってくれた。眠れない日々だった。
だけど、ある日、訪れた施設で問い合わせの記録を直接私に見せて欲しい、と頼んだ時、私は彼らの名前を見つけてしまった。彼らも探してはいたのだ。
それでも、彼らが真黒郎を虐待していたのだったら、絶対に返さないと思った。
彼らに頼んで獣医の記録を見せてもらった。その記録を丹念に調べた。確かに真黒郎は毎月のフィラリア予防薬を飲ませてもらっていた。
問題は、予防薬の前にテストを受けていなかったことだ。たぶん、彼は最初に獣医にかかる前、既にフィラリアにかかっていたのだ。そしてひどい皮膚病、これはデモデクスによるものだからステロイドは禁忌のはず。でも診断は「アレルギー」となっていて、真黒郎はステロイドの注射を受けていたのだった。
つまり、彼の体の問題は飼い主ではなく獣医の不注意によるものだとわかった。
先方は私たちが獣医に支払った費用もすべて返還する、と言ってきた。
もう彼を返さないでいられる理由はなくなってしまった。返したくなかった。でも飼い主も本当に真黒郎を大切に思っていることがわかったから、彼を返すことになった。
その時は辛かったけれど、その後見せてもらった飼い主と真黒郎の姿は私たちが嫉妬するほどのもので、万事うまくいったのだった。
それから数ヶ月、会うはずの予定は私の急病や先方の都合でキャンセルになって、実現しないかに見えた。
ところがある日。学校へ行こうと息子がドアを開けると、真っ黒な塊が家に飛びこんで来たのだ。私たちのこと、やっぱり忘れられなかった真黒郎はたっぷり遊んで、夕方飼い主と一緒に帰っていった。
そして2日後、またもや真黒郎は戻ってきて、たっぷり遊んで、今度は飼い主の都合で一泊お泊まりしていった。
それからずいぶん経って、もう再会を半分あきらめかけていた3日前。彼はまた戻ってきた!当然のように家に入り、クッキーの水を飲み、クッキーのごはんを食べて、庭でたくさん遊んだ。プールにも飛びこんだし、ボールやフリスビーも散々楽しんだ。迎えに来た飼い主ともうちの庭でしばしボール遊びをして、真黒郎は「また来るね!」という顔をして帰っていった。
今度はいつ来るのかな?答えはすぐに出た。真黒郎の「すぐ」は一日後のことだったんだね。でも今回は私たち、すごく忙しかったからすぐに飼い主のところへ連れて行くことになってしまった。今、それが少し不安です。真黒郎、拒絶されたなんて思っていないかな。また来てくれるよね。
後日談:来ました。これ書いた3日後に(笑)。
水嫌いのクッキーを誘うMcLOとおそるおそる前足を入れるクッキー
マクちゃんはコワイ顔だけどハンサムです。

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