
連休中、妹が遊びに来ていたのに、原稿に追われてほとんど相手をしてあげられませんでした。
で、今日は東京駅まで送るついでに、Fumingさんの庭を案内してきました。
「丸の内仲通りフラワーギャラリー2006」の続きです。

新しく加わったヘラオオバコと、元気を取り戻したハルガヤが良い雰囲気を醸し出しています。
2人で庭の写真を撮っていると、通りがかった叔母ちゃま2人が、
「あら、ほっとするわねぇ。」
「イングリッシュガーデンみたいねぇ」
「ビオトープガーデンですって、いいわねぇ」
なんて話してるのが聞こえて、妹と二人でにまにましてしまいました。
ただ、誤解があるといけないので、念のためにコメントを一つ添えておこうかと思います。
Fumingさんも
彼女のブログで書いていましたが、これは言うなれば「雑草を味方につける庭」の一つの到達地点であり、同時に途中経過を見せているに過ぎないんですよね。
今回は、ガーデニングショーの見本園造りという限られた時間の中で、都市生態系のダイナミックな移り変わりを見せなければならないんで、色々と近場にあるありふれた雑草を集めてきて造っている訳なんですが、本来ならこれは少なくとも1年かけて選択的除草を続けた結果こんな風に安定してきたよっていう状態なんですよね。
何も、ビオトープガーデンを造るには、あちこちから雑草や鳥の糞から芽生えた果樹の苗を集めてきて造らなきゃいけないんですよってな話しではないんです。
ネイティブな雑草を気にならない所やお気に入りの場所に残してあげて、鳥やハチやチョウが集まる装置を仕込んでおいてあげれば、いつのまにか自然が回復してきて、それが心地よいハーモニーを奏でるようになるんだと、そんな庭造りの一過程を示しているんです。
自然に優しい庭を造ろうとするなら、潔癖症的な草取りの手を少しだけ休めて、今奪おうとしている命のささやかな美しさを、もう一度慈しんであげるだけで良いんです。

そうそう、このスズメノヤリも新しく加わったメンバーです。
なかなかかわいいでしょ。
ホソヒラタアブがきてました。

よく見ると、体に花粉をつけていました。
この子たちがいると、ハチやチョウが飛び始める前に花を着ける、フサスグリやブルーベリー、サクランボなんかの実の着きもよくなるんですよ。

オスの胸をよく見てください、羽の下から突き出ている黄色い虫ピンみたいなものが平衡棍。
後ろ羽根が退化して、これで飛ぶときのバランスをとっているんだそうです。
ちょっと見はハチみたいですが、これは鳥を欺くための擬態で、針を持たないハナアブの仲間ですから刺すことはありません。

こちらがメス。
ヒラタアブの幼虫はアブラムシを片っ端から食べてくれますから、親子共々ありがたい昆虫です。

丸の内の急ごしらえの庭には、蝶こそ来ていなかったものの、あちこちでこのヒラタアブの仲間を目にしました。
ということは、この付近に、1年中なにがしかの花がとぎれることなく咲き続けていて、この子たちの命を養っていると言うことになります。
で、どこにそんな花の咲く所があるのかなぁと思って探してみると、ありましたありました。
日当たりの良い中央分離帯が、どうやらここの昆虫相を支えているようです。
このささやかな多様性が、冬でも絶えることなく花のリレーをして成虫で冬越しする虫たちを支えているんです。
カタバミもたくさん生えていましたから、もう少ししたらヤマトシジミも飛び出すんでしょうね。
はて、それにしても虫が少ないなと思っていたら、消毒タンクをゴロゴロ引っ張ってサツキにまいているおじさんに遭遇しました。
.......なるほどね。
さて、他の庭については、あんまりコメントしたくないというのが正直な所ですが、前回余計なことを書いてしまったし、実証主義の僕としては少しばかり皆さんに判断材料を提供するのがフェアな姿勢じゃないかなんて思って、今回めだった「なんだかなぁ」たちを、かいつまんで紹介しようと思います。

まず、今回あちこちで気になったのがこんな例。
苗の鉢がむき出しのままという庭が、驚くほどたくさんありました。
「ビニルポットを見せる=コンテナガーデン」というコンセプトなのかしらん?
これはまだ良い方で、中にはポット苗をただ並べた様が丸見えで、ずらっと並んだ様子がある意味壮観なんて庭?もありました。
僕としては、もう少しフィニッシュアップした方が、素人目にもウケが良いような気がしましたが、どうなんでしょうね。
妹曰く、「撤収は楽そうね」。

もう一つの例は、この手の植物を生かしておくのが物理的に困難なメカを含む庭?でした。この手のアクロバティックなトライも何種類かありましたね。
ここのは、やっぱり枯れてましたけど。
まぁ、こう言うのは、水やりに自信のない僕なんかは、マネしたくてもマネする勇気が出ませんが。

これは、見ればわかると思いますが、湿地の植物と乾燥地の植物、半日陰の植物と日なたの植物を、一つのコンテナに同居させた例。
コンテナガーデンの醍醐味の一つに、全く異なった生育環境の植物を隣り合わせに配置できると言うことがあげられると思いますが、それはあくまでも鉢単位での事だと思っています。たとえば、サボテンや多肉植物の寄せ植えの横にミズカンナやミソハギの寄せ植えというか睡蓮鉢を並べて楽しむというのは、コンテナガーデンならではの魅力ですよね。

これは熱帯の薄暗い湿った林に育つ植物と、温帯の乾燥気味で直射日光の当たる場所に育つ植物をルーツとする園芸品種を組み合わせた例。
もちろん自宅の庭でこんなに密植したら、病気やら害虫やら日照不足やらであっという間にひどいことになりそうですが、そこはまぁ、ほんの1週間見せられればいいと言う儚い夢のような庭を造るというコンセプトなんだろうから、文句を言う筋合いのものではありませんよね。
なんというか、僕は、庭というものに対する先入観というか、固定観念のようなものを捨てきれない頭の固い人間な上に、数年間ほとんど手入れもしないで絶えることなく花を楽しめる庭が理想だなんて思っている不精者で、出来ればあんまりお金も掛けたくないというシブチンなもんですから、こういう新発想の庭を見るとついアレルギー反応をしてしまうんです。
なので、やっぱり、ガーデニングショーって苦手だなあって思ったりしたのでした。

写真は、東京駅前のロータリーで、スズメがタンポポの種を食べている所を妹が目ざとく見つけ、慌てて撮ったものです。
たとえ帰化植物でも、こんな厳しい都市環境に生きる野生動物にとっては、貴重な餌となって彼らの命を支えているんです。
さて草取りをしようかなっていうとき、この子たちのことを思い出してみるのも自然に優しい暮らしの第一歩なんじゃぁないでしょうか?
ジェノサイト的な草取りは、新しくできた裸の土地に、もっとたちの悪い帰化植物に付け入る場所を提供するようなものなんですよ。