気ままニュース165
11月3日に
御苑の菊花壇展を見に行ってきました。
11月1日から15日まで。期間中は特別開園期間として、毎日休まず開園だそうですよ。

一文字咲き。
これがいわゆるありがたい菊の御紋です。
普通はほそいハリガネの台座なんですが、この画用紙を丸く切ったのは、一応エコを意識してのこと?
イヌネコ治療のエリザベスカラーみたいで、ずらっと並んだ所はなんか写真を撮る気になれませんでした。ツヤ消しだなぁ。
ちょっとびっくりだったのは、皇室と菊の御紋との付き合いは意外に新しかったと言うこと。
菊が皇室の紋章と定められたのは、明治元年(1868)なんだって。
中学の頃習ったのかも知れないけど、すっかり忘れてしまってたのかも。

これは、江戸菊。
「この菊は花びらが様々に変化する狂いの芸が特徴」なんだそうです。
菊に狂う........。
「江戸において流行したので、江戸菊ともよばれています。また、花びらが様々に変化することから、狂菊ともよばれています。その狂い方によって、「追抱(おいがかえ)」、「褄折抱(つまおれがかえ)」、「丸抱」、「乱れ抱」、「自然抱」、「露心抱(ろしんがかえ)」「管抱(くだがかえ)」の7通りの名前がつけられています。」
以下、括弧内は新宿御苑ホームページ
御苑の菊花壇展から引用
ってことは、この花、筒型の花弁が下の方に何本か顔をのぞかせてるから「管抱(くだがかえ)」ですね。
狂い方も、なかなかに奥が深い。

明治17年(1884)から続いているという大作り花壇 (おおづくりかだん)

あたし、見たんです....。
これ、10月28日の準備の様子です。葦簀(よしず)の隙間からのぞいてみると、菊の蕾を一つ一つ丹念に台座に結びつけていました。
ちょっと蘊蓄。
菊作りで、枝の長さを調整する時、伸びが早い枝にはツマヨウジなどで茎に傷を付けると言う方法があるんだそうです。これも、確か中学の頃に菊作りを教わって、やったことがあるはずなんだけど、なんか憶えてないんだよね。
あとで、文献で読んだものです。
菊の茎は5角形になっていて、そのうちの2辺にツマヨウジなどを刺すんです。するとその刺激でエチレンが発生して、成長が抑制される。
高さがそろったところで、ツマヨウジを抜くんだそうな。
この伝統的な技法、もちろんエチレン云々なんて昔の人は知りません。経験から導き出されたもの。それが返ってものすごい観察力と洞察力だなぁって、感心させられるんです。
エチレンガスってのは、植物ホルモンの一つなんです。
そう、意外なことに気体のホルモンがあるんですよね、植物って。
僕たち動物だとフェロモンってのがあるけれど、植物の場合このエチレンはフェロモンとしてもホルモンとしても機能するってなユニークさがあるんですよ。

これは、厚走りと厚物のコーナー。
大菊の厚物と厚走りの39品種311株を1本仕立てにして、黄・白・紅の順序に、45度の角度で1列1種として植え込んだ花壇で、配色の美しさが昔の神馬の手綱の模様に似ていることから、このような植え込みの技法を手綱植えと呼んでいるそうです。

手前の白い菊を見ると下の方の花びらがススッと長く伸びてますよね。これが「走り」です。
奥のエンジの菊は花びらが掴みあげたみたいに、左右に暴れてるでしょ。
あれが掴み咲き。
「厚物は、花びらの先端が中心に向かってうろこ状に丸く盛り上がって、手まりのような形になるのが特徴です。厚走りは、一番外側の花びらが長く飛び出ています。」とのこと。

屋根を着け、葦簀で日よけして、なかなか大変です。
ここらで、あんまり見かけない菊も紹介しておきましょうね。

この縮れてるのは伊勢菊。
「伊勢菊は伊勢地方(現在の三重県松山市・津市)で発達した菊です。花びらが平たく、咲き始めは縮れていますが、開花するにしたがって伸び、垂れ下がって満開となります。花びらが長く垂れ下がるほど良い花とされています。」

筆の先のように咲いている嵯峨菊。
「嵯峨菊は、嵯峨天皇の御愛の菊として、京都の大覚寺に植えられたものが始まりといわれる、もっとも古い歴史をもつ古典菊です。」

丁子菊。カワイイでしょう。
「昔、おもに関西地方で作られた菊です。花の中心の筒状の花びらが香料の丁子の花に似ていることから、この名前がつきました。」
僕の知ってる丁子咲きは、筒型の花びらの先端だけ開いてスプーン状になってるやつばっかりでしたが、この花はだいぶ違うタイプですね。
気になったんで調べてみたら、
「丁子菊には平丁字、匙(さじ)丁字、管(くだ)丁字があるが、現在ほとんど作られていない。」
世界文化 生物大図鑑9から
この品種は、平丁字なんですね。僕が知ってたのは管(くだ)丁字。
さて、菊と言えばこの懸崖作りは、はずせません。

懸崖作り花壇 (けんがいつくりかだん)
大正4年(1915)からだそうです。

それにしてもまぁこの色鮮やかな小菊。
僕が学生だった30年前には、こんな鮮やかな赤の小菊なんてありませんでした。色鮮やかなポットマムが一般に定着しだした頃です。色素分析やらあちこちでずいぶんやってましたね。システマティックな交配の積み重ねの成果なんでしょうか。

小菊の花壇が、秋の日差しに映えて良い気分でした。

キタテハも、花の上でひなたぼっこです。
もう暑いくらい。
のんびりお弁当を食べて、いい日和でした。