写真は2008年7月15日のゲレンデの一部です。
ユリだらけでちょっとうんざりですが、生態系の複雑さを取り戻すためのはじめの一歩がこの状態でした。
2007年以来続けてきた、無灌水、無起耕、無肥料、無農薬で、生態系の緩衝能力を最大限に引き出し利用しながらの環境回復の取り組みって、なかなか楽しいものですよ。
主な手入れと言えば選択的除草とグラウンドカバー植物による環境の安定化ぐらい。
2007年に植えたスカシユリ6品種15,800球が、2008年には1つの球根が分球して5株から7株に増えてしまい、少なく見積もってもなんと79,000株に。
1球あたり15輪前後咲かせ、概算でざっと2,370,000輪が咲き誇りました。
もちろんその間にはいろんな宿根草が咲いてるんだけどユリが目立ちすぎてバランス悪い状態。
と言うか、あんまり増えすぎると病気が蔓延する危険性が増すんで嫌だったんですよね。
そう、程よく多様性が保たれていれば、病害虫の大発生は心配する必要がないので、出来る限りいろんなハーブや宿根草も植えていたんですけどねぇ....
だけどなんでまた、
こんなにユリやら園芸種やらを植えて、環境回復?って思うのは当然ですよね。
生物多様性の回復とか環境の再生とか言うんだったら、普通はまず野生種を植えるんじゃないの?ってね。
実を言うとこのゲレンデ、2006年までの長い間サルビアとオニウシノケグサっていう牧草のたった2種類の植物しかなかったもんだから、
媒介昆虫はおろか鳥も哺乳類もほとんど居ない(暮らせない)、まさに「沈黙の春」状態だったんです。
ゲレンデの脇にわずかに生き残っていた野生植物の状況を回復させようにも、花粉を運ぶ虫さえいない。
仕方がないんで、
手始めに園芸種を植えて蜜源やら食草、野鳥たちのエサ源の肩代わりをしてもらって、それから野生種の回復に取りかかるってな手順が必要だったからなんです。
植え付けだのの最初の手順はこちらなどに。
大地を守る、メドーガーデン
そしてここには、ユリが咲き始める前の花壇の様子。
はなだより
ユリ開花中のゲレンデと周辺の山林エリアに残された生物相などの紹介。
野生の呼び声
こちらには、ユリが咲き終わったあとの花壇の様子。
昆虫相の回復過程も少し紹介してます。
佐久便り2〜ビオトープガーデン園芸種編
さらにこちらには、2006年に作ったビオトープエリア。
2005年に行った生物相の調査結果をもとに、ゲレンデの片隅にかろうじて残されていた野生種を集めて、本来の植物相を再生する足がかりにしています。
佐久便り〜ビオトープガーデン野生種編
2006年のゲレンデと林での選択的除草など
秋のイベント2つ
2006年の生物調査の一部はこちらに
くまのつめあと
けものみち
それにしてもね、こんなにユリだらけになるとは、いやはや。
いったん生物多様性が失われた場所では、簡単にバランスが狂うってな見本?
ちょっと違うか。
初年度は、花が咲いても飛んでくるチョウと言えばジャノメチョウばっかり。
連中の食草は、イネ科の牧草なんだから、当然と言えば当然の結果だよね。
でもまぁ、そんなこともあろうかと、フェンネルだの野生のセリだのその他いろんなチョウの食草も植えておいたんで、その年の秋口にはいろんな虫が飛び始めたんですよ。
2008年2009年のゲレンデの様子はこちらに。
まだごく一部しかアップできてませんけど。
園芸種はこちら
Pseudo mediterranean climate garden in Nagano Japan
園芸種と野生種&昆虫たちはこちらに
My BiotopeGarden in Nagano Prefecture
Fun of bugs life
で、2009年の天候不順で病気にやられた品種も出たけれど、さらに分球して増えてしまった品種も!
とはいえ、全体としては程よくユリの密度も下がったところへ、緊急雇用対策の
使える人員補充もあったおかげでそれまでの実質上僕を入れて2人体制ってな悲惨な状態からやっと脱却、ゲレンデから収穫した野生種やら園芸種やらの宿根草の種をまいたり挿し木で殖やしたりして2万株以上の苗をせっせと植え付けたおかげで、今年の春のゲレンデはなかなかの生物多様性を獲得した感じです。
今年は冷涼な気候が幸いしてスカシユリも目下順調にと言うか、5月の終わりにはもう花芽が!!
でも今のところ、6月中に咲く心配はなさそう。
梅雨入りしてからの低温多湿がどう影響するかが心配です。
それと、シカやイノシシなんかとの共存作戦にも取りかからないとね。
僕的には、もっといろんな大型哺乳類がゲレンデでくつろげる環境にしたいんだけどさ。
2010年のシカやムササビなんかのゲレンデ周辺環境の利用状況はこちらに。
Biotope Garden Picnic
ま、それはさておき、ゲレンデの枯れ草も刈り倒したあとは敷きつめると言う手入れの方法に切り替えたら、2008年には昆虫相の多様性が爆発的に回復したのをきっかけに、野鳥の種類と密度も一気に増え、絶滅危惧種のカヤネズミの営巣も50ヶ所以上見つかるようになりました。
上の写真は、ホオジロの雛です。
昆虫館脇の草地での営巣でした。
Hatching Meadow Bunting
ところで、去年の8月に市役所からの指導で、ゲレンデ花壇にさらに5,000球のユリ球根を植え足すことになりました。
えぇ、真夏にね。
なんでも、2008年になっても花が全く咲いていないからという話しだったんで、さらに耳を疑いましたけどね。
もちろん、球根の植え付けは11月まで待ってもらいましましたけど。
そんなこんなで、なかなか飽きない現場なんで、気に入ってます。w
林の間伐をしたエリアには、こんなオブジェ風のエサ台を設置したり。
Walking Bird Feeders
間伐材で野鳥観察用に目隠しを作って、こんな写真を撮って遊んだり。
Crown of fallen leaf
今年の7月には増えすぎたハーブ類を使って、ハーブ染色講座でもやろうかななんて思っています。
それよりも、秋口に子どもたちを集めて、奇妙なエサ台や環境回復の役に立つオブジェ作りなんかもやりたいなぁなんて思ってるんですけどね。
どうなる事やら。
2010年5月29日の読売新聞で、早くも「
生態系保全目標、大半先送り…条約会議準備会合」なんてニュースが流れたくらい、人類は目先の利益に戦々恐々として、今後も自分たちの首を絞め続けることにしたようだし。
ちょっと抜粋すると.....
<2011年〜20年までに達成する全体目標について、準備会合では「生態系の破壊を止める」と提案する欧州連合(EU)に対し、より現実的な目標を求め、「破壊を止めるための行動を起こす期間」と主張するブラジルなど途上国の間で対立が深まり、両論を併記するにとどまった。>
てなザマだし。
生物多様性の損失止まらず
<1970年から36年の間に野生の脊椎動物(魚類、両生 類、爬虫(はちゅう)類、鳥類、哺乳(ほにゅう)類)の数が平均約3分の1減り、その傾向は継続していると指摘。特に森林伐採や開発などの影響で熱帯地域 では59%、淡水域では41%減少するなど状況は深刻>
と言う状況をくい止めるためには、僕個人としては出来ることから楽しみながらコツコツやるしかないのかなとか思ったり。
えぇ、こんな状況でも、オプティミストなんですよ。
ヒザ抱えて日だまりでゆっくり悲しんでる暇なんてありませんからね、僕たちには。
次の世代、子どもたちや孫たちの世代でもまだ地球上で生物が暮らせてると良いなぁって、ホントにそう思うんです。
人間が居ることで生物多様性も増していくような暮らし方、そんなのを一つ一つ具体的に組み立てながら実行するしかありませんからね。
その実況中継を「パラダの自然百科 生物の多様性と調和 虫と私たち」なんて長ったらしいタイトルのホームページでも紹介していこうと思っています。
http://kabutomusi.jp/
まだβ版の域を抜けてないんですけど。
汗