
何だかやっと少しだけ涼しくなってきましたねぇ。
まぁ、それでも僕は、あいも変わらず大汗かいているんですが。
写真は先月、ちょっと涼しかった日に、ふと思い立って新宿御苑に立ち寄って撮ってきたものです。
幾重にも揺れる薄の穂の、何とも涼しそうな風情。
ススキは、日本では、お月見の時ぐらいしか需要のない植物ですが、海外では
グラスガーデンの需要もあって意外なほど人気の高い植物で、ナーサリーによっては50品種ぐらいのラインナップを誇るところもあるくらい。
それに引き替え日本の、特に都心では、お役所から随分嫌われていると見えて、そんなにしなくてもと言いたくなるほどの迫害ぶり。
この間も、お月見用にと思ってススキを探しに善福寺川沿いを2時間ほど自転車で探し回ったけれど、ついに一株も発見できなかったくらい徹底的に駆除されてしまっていました。
何と無粋な国でしょうか!
初秋の風情を、そこはかとなく悲しむことさえ許されないなんて。
薄の一株も無きぞ悲しき
「無きぞ悲しき」で思い出しました。
これ、何だかわかります?
七重八重
花は咲けども.......
そう、山吹の実ですね。
と言っても、正確にはシロヤマブキの実なんですが。
七重八重
花は咲けども
山吹の
実の一つだに
無きぞ悲しき
ってのは有名ですが、あの艶やかな山吹色の花のあとには、ちゃんと地味〜な実がなってるんですよね。
シロヤマブキの実は艶やかな黒ですが、ヤマブキの方はさらに小さい緑色の実がなっています。
余りにも目立たない実なんで、今回は写真を撮ってませんが。
七重八重
花は咲けども山吹の
みのひとつだに
なきぞあやしき
兼明親王『後拾遺和歌集』
これが本歌なんだそうです。
幾重にも折り重なって咲く華やかな花の時期とは好対照になりをひそめている実りに、呪術的と言っても良いような生命の不思議を昔の人も見逃さなかったんですねぇ。

「七重八重」と言うなら、この花も忘れてはいけませんね。
奈良七重
七堂伽藍
八重ざくら
芭蕉
と言っても、この十月桜が本領を発揮するのはやっぱり春のお彼岸あたりなんですが。
え?花と競う塔なんか、御苑には無いじゃないかって?
つきぬけて
天上の紺
曼珠沙華
山口誓子
まぁ、あいにくの曇天でしたが、すっくと今様の塔と高さを競う彼岸花に免じて。
A(^_^;

傍らには、その成立にも謎の多く残されている
白花曼珠沙華が咲き誇っていました。
この花は、その野生品も見つかる九州地方あたりで
ショウキズイセンの一タイプと中国原産の
ヒガンバナの二倍体変種(普通に種子ができる種類)とのあいだにできた自然雑種由来という説があるんですが、現在日本にあるヒガンバナはいずれも種子のできない三倍体ばかり。
つまり、片親が見つからないんですね。
とは言え、
仏典に現れる曼珠沙華は、「
天上に咲く花。白くて柔らかく、見る者に悪を離れさせるはたらきがあるという」らしいので、名前の由来からするとこちらがご本家と言うことになるのかな。
いずれにしても、出生の謎なんて忘れさせてくれるほど、無邪気に咲き誇っていました。

さて、なおも園内を歩き進めていくと、池の端で
秋茜が羽を休めていました。
夏の間、遠い山間で過ごしていたのが、秋の気配をいち早く感じとってこうして里まで下りてきたんですね。

そうそう、「七重八重」で忘れてはいけない花がまだありました。
七重八重
九重とこそ思いしに
十重咲き出づる
萩の花かな
ご存じ、
萩大名のあれです。
でも、この話が、圓窓五百噺の一つ「
萩褒め」になってたのは知りませんでした。
なんだかねぇ.....。
もっとも大筋は同じで、太郎冠者の代わりに与太郎の父親が、
[指を七本、八本示して、「七重八重」
指を九本示して、戸を開ける仕草、脇の下をくすぐる仕草をして、「九重とこそ」
なにかを重そうに持って、ばったりと倒れて死ぬ仕草で、「思いしに」
指を十本しめして、拳骨をパッと開いて見せて、「十重咲き出づる」
庭の萩の花を指差して、首を傾げて、「萩の花かな」
ところが、与太郎は正しく言えず、「七本、八本」「九本とコチョコチョコチョ」
「重い、ばったり」「十本、くるくるパア」「ハゲ頭かな」などと滅茶苦茶に言い出す。]
と、まあ同じ趣向なわけで、下町版と言ったところですかね。
オチは、リンク先で楽しんでくださいまし。

さて、御苑をあとにして、都庁方面へと歩を進めると、
windowsのマークをそのまま3Dにしたようなホテルが見えてきます。
うむぅ〜、やっぱり「不正使用です」なんてトラブルが多発するんだろうか?>ボカッ!

と、馬鹿なことを考えながら歩いていたら、こんなところにも秋が来ていました。
見上げれば、都庁が。
さっきのDOCOMOのビルと言いこの都庁と言い、利権の甘い汁をすすって暮らすゴブリンやらデ−モンが巣食っていそうですよねぇ。
ちょっと試しに、
「利権」と「石原慎太郎」で検索したら、何かすごいのがっぱい出てきて嫌になっちゃったよ。
われにつきゐし
サタン離れぬ
曼珠沙華
杉田久女
この分じゃ、
国会議事堂あたりにも
白花曼珠沙華を植えなきゃいけないんじゃないかなぁ?
さて、七重八重と言わず七転八倒、十重二十重にたたみかけてきたので、皆様もお疲れのことでしょう。
けふここのへで、お開きと言うことに。