
子どもの頃見た映画というのは、なぜだかホントに深く心に刻み込まれているようだ。
「
緑の館」も、そんな
映画の一つ。
青年アベル(アンソニー・パーキンス)
酋長ルーニ(早川雪洲)
森の妖精のような美しい少女リーマ(オードリー・ヘップバーン)
祖父のヌーフロ(リー・J・コッブ)
今、こうしてみると、すごいキャスティングだったんだねぇ。
そう、子どもの頃にはどんな配役だったかなんて頓着してなかったけど、少女リーマの神秘的な美しさはそれはもう特別のものだったし、今でもこの映画を見て受けた胸の痛みを思い出せる。
それに、あの映画の神秘性に深みを持たせた美しいサンゴヘビ。
すべては美しすぎる悪夢の中へと転落していく。

とはいえ、映画の話しをするつもりでははないのだよ。
台南にある、アンピン・ツリーハウス(
安平樹屋)と呼ばれているところ。
まさにそのまんまの場所。
かつてはドアだったところも、ガジュマルの根っこにふさがれている。
人間の営為の儚さを感じさせてくれると同時に、自然の力を見せつけられる。
少しは、人間も「謙虚」と言うことを思い出すことの出来る場所だ。
ツリーハウス=安平樹屋は、2004年に公開を目的に修復されたばかりなんだそうですね。
もともとは倉庫だったそうで、建物をむしばんでいるガジュマルは樹齢100年近いと、入り口で配られていたパンフレットには紹介されています。

中に入ってみると、鉄骨で補強されていて、一応瓦解を防いでいるようです。
内部を見て行くにつれて、以前紹介した
フンデルトヴァッサーの構想なんて言うものは、いかにも自然を御しやすいオーストリア的発想だったんだなぁって痛感させられますね。

スレート葺き?の屋根のあったところには、ガジュマルの根が平行に走っていました。
波形の屋根に積もった落ち葉の中を、根が進んでいったのがよくわかります。

キャットウォークで上から見るとこんな感じ。
枝が屋根にのしかかり、そこから気根が伸びていって屋根にたまった落ち葉沿いに走って行き、生長するに連れて屋根を食いつぶしていきます。

重みで屋根が抜けたら、今度は部屋の中へと気根を垂らしていき........

そして、地上に到達したら深々と根を張り、部屋の中を占拠していきます。
こうやって建物の中に立って眺めていると、ここが崩れ去ってしまうのも時間の問題なんだなぁと、ひしひしと感じさせられます。
僕は昔から遺跡とか廃墟みたいな物は好きだったんだけど、ここは外見の異様さとは裏腹に、廃墟にありがちな妖しい気配というのが全くなくて、カランと乾いた静けさのようなものを満喫できました。

壁に気根が這い始めると、その部分は雨水を蓄えるようになり、さらに根の発達を促してしまいます。
壁がなかなか乾かないので、藻類が繁殖して緑色に変色しているでしょう。
近い将来このおびただしい気根が、この部屋をさらに満たしていくんですね。

窓から入り込んだ根は、煉瓦の湿り気を頼りに部屋の中へ。

それにしても、こんな街中の建造物が少なくとも50年は放置されて、しかも取り壊さないでこんな風に公開するためにきちんと整備しているというあたり、台湾の文化的な懐の深ささえ感じさせられました。
日本だったら、絶対に
同潤會青山アパートみたいな事になっちゃうんだろうね。