退職まであと何カ月、何週間、何日、と指折り数えて待っていた。
いよい当日。
ああ、今日で退職するんだ、と実感がないまま朝を迎えた。
昼間の例会では壇上で感謝状をいただいたが、さほど感情が沸かない。
ここ数日は引き継ぎやら後片付けで仕事に追われ、最後の最後まで慌ただしく働いた。
そして退社したのはいつもより遅い時間だった。
事務所のカギなどを返し、ドアを閉めた。
まだ、実感がわかない。
駐車場まで行き、同僚といつものように「お疲れさまでした」と別れる。
彼女は笑顔で、「たまには事務所に寄ってね。一緒にお昼でも食べようよ」と言ってくれた。
このとき、こみ上げるものがあった。
8年前から彼女と一緒に仕事をするようになったが、今までの人とは違った心地よさを感じた。
仕事の悩みや愚痴を分かち合い、プライベートのこともお互いの話をよく聞きあった。
ずっと一緒にいた彼女との別れがとても辛く思えてきた。
3か月前、自分の都合で辞める決心をし彼女に伝えたとき残念がってくれた。
一緒に働けたことを本当に感謝している。
ありがとう。えつこさん!