桐生市にある「れすとらん芭蕉」は、
昨年10月、新聞、雑誌で紹介され一躍脚光を浴びました。
私もたまたまNHKのテレビで放映されたのを見て知りました。
1月末、桐生でのコンサートを聴きに行った帰り、ふと寄ってみました。
話題となったのは棟方志功が描いた大きな壁画です。
志功が店を訪れたのは1953年。
初代店主、小池魚心さんと交流のあった茶道家近藤さんが縁を取り持ったのです。
半日足らずで縦1.8m、横3mの大作を仕上げましたが、
この店の雰囲気に合わない、
と小池魚心さんは翌日職人に命じて漆喰で覆ってしまいました。
以来、封印されたままです。
ところが、今から10年前、近藤さんが2枚の写真を発見しました。
その写真には壁画を描いている棟方志功の姿があります。
そして、店の前に並んで撮った志功、近藤さん、小池魚心さんらが映っています。
すでに魚心さんは他界し、近藤さんも壁画のことは忘れかけていたのでしょう。
近藤さんは漆喰をはがして復元しようと思いましたが、
二代目店主、小池一正さんに通じませんでした。
父の思いを尊重したい、という思いが強かったようです。
そして昨年、店の改装を機に再び壁画復元の話が持ち上がりました。
発案者は小池さん夫婦の古くからの知り合いで、当時店でアルバイトをしていた人です。
小池さん夫婦は、半世紀以上も経てばもういいだろう、という気持ちになったようです。
昨年10月、10日間を費やし、ついにその全容を現したのです。
店主は留守だったのか、女将さんが丁寧に説明してくれました。
ここは部屋と部屋を結んだ廊下の役目をしている通路。
まるで店の中に小路があるようです。
女将さんは私をいろいろな部屋に案内してくれました。
棟方志功が使った部屋や、今では使っていない小部屋など。
先代の店主、魚心さんは大の馬好きだったようです。
店のあちこちに収集品が飾られていました。