駅前通りは片道2車線になり、2メートルくらいの広い歩道があります。
そろそろ職場に着くころ、次の信号が青になっていました。
前を行く自転車の人に、
おじさん早く漕いで、赤になっちゃう!
と心の中でつぶやきました。
交差点では歩道の角が取れて丸いカーブを描いています。
そして車道との境界には幅・高さ共に20センチほどの分離帯がカーブに沿って繋がっています。
分離帯に沿って左に曲がり、横断歩道を走らなければなりません。
ところが、前を行く人は、ずっとまっすぐ走り続けました。
おじさん、危ない!あっ、ぶつかっちゃう!
次の瞬間、自転車とおじさんは分離帯を乗り上げ、車道側に転倒しました。
「大丈夫ですか」
私は自転車を降り、おじさんに近づきました。
「ええ、大丈夫ですよ」
そうは言っても、痛てててて・・・と声を上げています。
私は転がった自転車を起こしながら、おじさんの顔を見ました。
おじさんも私の顔をじっと見ています。
私よりも若そうな人でした。
「私もよく転ぶので痛さが分かりますよ」
転がって起き上がるとき、誰かに声をかけて欲しくなるものです。
だから私も話しかけてみました。
すると、おじさんは、
「これ、危ないですよね」
と分離帯を恨めしそうに見ながら言いました。
「ちゃんとレントゲンと撮って検査した方がいいですよ」
ちょっとお節介の言葉を残して、先を急ぎました。