「めぞん一刻/本木克英;2007年テレビドラマ作品」
テレビ番組
マンガ原作を実写映画(ドラマ)化する難しさはよくいわれるところではあるが、本編を観ているあいだじゅう、その言葉がまるで呪文のように脳裏に渦巻いて離れなかった。十数巻にもわたる分量を備えた原作から、エッセンスを抜き取ってシナリオ化し、最終的に2時間程度のドラマとして仕上げるには、群を抜いた構成力と演出力が必要なのだが、たとえそれらを教科書的とも思える完璧さで仕上げたとしても、生身の人間とマンガのキャラクターとのギャップは埋めがたく、ファンからは結局のところ「こんなのオレのXXじゃねえ!!」という罵声を浴びせられて終わり、というのがお定まりのコースなのだ。
その昔、僕も原作を読んではいるのだが、登場人物の名前をうっすらと憶えている程度で、ストーリイの細かな部分や結末などはすっかり忘れていたため、ほぼ先入観なく観賞することができた。そうはいってもマンガのドラマ化のいちばんの問題点、つまり、俳優がキャラに似ているかどうか、という点に関しては、やはり大満足、とまでは行かなかったが^^;(長身・細面の伊東美咲はヒロイン響子さんのイメージとはかなりズレる)
ドラマとしての構成は、ややまったりしすぎの感はあるものの、これは「釣りバカ日誌」シリーズを撮ってきた監督の持ち味なのだろう。もはやベテランの域に達した岡田惠和の脚本は、さすがのうまさで長大な原作の持ち味を損なわずにまとめていたが、たった2時間では全てを語ることはとうてい不可能で、主人公の五代裕作(中林大樹)が大学受験に合格したところでひとまず終らせている。この判断は、当然ながら続編の製作を予定しているということでもあり(響子をめぐる終生のライバル、三鷹=沢村一樹=がラストでチラリと登場する)DVDの発売が決定していることからしても、よほど数字がコケないかぎり(結果的には12.1%とのことて、大成功とはいえないものの、大失敗でもないという、この作品の性格同様にはっきりしないものとなった^^;)シリーズ化は間違いなかろう。
唯一合点が行かなかったのは、冒頭に「現在」の裕作とその娘、春香(森迫永依)が登場し、一刻館の跡地で回想を始めるあたりで、おそらく80年代とのギャップを表現したかったのだろうが、あまりいい導入部とは思えなかった。・・・
★★★

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