「私の優しくない先輩/山本寛;2010年劇場公開作品」
映画
観終わって、普通の青春映画とはどこか違う感触の作品だな、と感じたのだが、監督の山本寛氏はアニメ界の人で、本編は彼の実写映画第一作なのであった。そのせいなのか、シリアスな描写といかにもアニメ的なギャグ描写(たとえばヒロイン耶麻子=川島海荷=を不破先輩=はんにゃの金田哲=がゴジラのごとく火を吐きながら追うシーンなど)とが渾然一体となった不思議な作品となっていた。
舞台設定は非常に抽象的。九州のはずれにある火蜥蜴島という架空の火山島の唯一の高校が舞台で、主要な登場人物もごく少ない。主人公の西表耶麻子(いりおもてやまこ=ふざけたネーミングだが、これは原作由来のもの)とその両親(小川菜摘と高田延彦)、部活の先輩不破風和(音読するとフワフーワ)耶麻子が思いを寄せる南先輩(入江甚儀)転校してきたいじめられっ子で、後に耶麻子の唯一の友達になる筧喜久子(児玉絹世)くらいのもの。耶麻子が入部させられる部活なんて、広い体育館を独占使用しているくせに、部員は不破先輩と耶麻子しかいないのだ。
物語の進行役は耶麻子本人で、そのナレーションから話は始まるのだが、冒頭の「死後の世界」つまり、宇宙空間に浮かぶ耶麻子の魂から見た光景のあまりのチープさにちょっとげんなり。豆電球の星空に子供が作った粘土細工みたいな地球は、もちろん監督が意図したもの(終盤、似たようなシーンで不破先輩の意識が流入すると、ぐっとリアルな宇宙像になる)なのだろうが、計算以上に貧弱さが強調されすぎた。少女趣味っぽい宇宙を描きたかったのかも知れないが、個々のパーツが何であるか容易にわかってしまうようでは、逆にそのパーツの持つ具象性にイメージが引きずられてしまう。要するに、「予算がない」という現実を見せ付けられた気分になってしまうのだ。
後半、耶麻子の心臓病がクローズアップされるにつれ、物語は現実的になって行くのだが、リアルさを要求される演技を、はんにゃの金田は意外な器用さでそつなく演じていたように思う。しかし、物語の結末を読者に丸投げしたような終わり方はちょっとズルい。エンドロールの群舞をワンショットで撮った努力は買うが、これもやや無駄な努力という感じ。こんなところに精力を注ぐなら、もうちょっとほかにいじるところがあったように思う。・・・
★★★

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