「インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国/スティーブン・スピルバーグ;2008年アメリカ映画」
映画
第一作の「
レイダース 失われた聖櫃(アーク)」が公開されたのが1981年だから、本編はなんとその27年後に製作されたことになる。インディ(ハリソン・フォード)が老けるのも仕方ない。設定では第一作の時代背景は1936年、今回が1957年だから、6年ほど余計に歳をとっていることになる。
冒頭の核実験場のエピソードが個人的にはいちばん面白かった。話が進むにつれ、ストーリィの核がしっかりしなくなり、アクションのつるべ打ちでごまかす傾向が強くなるのだが、パラマウント映画の山を模した盛り土の下からプレーリードッグが現れる巻頭から、立ち昇るキノコ雲を見上げるインディのバックショットまでのシークエンスは、まさにスピルバーグの本領発揮といえる見事さ。核爆発のさ中、冷蔵庫に入って難を免れるなんて裏技、インディでなければ絶対不可能だよね^^;
以下ネタバレあり、まだ観てない人は読まないように
しかし、中盤になって話が世界をまたぐようになると、展開にやや無理が目立つようになる。以前のシリーズでは展開にもう少し「溜め」があった気がするのだが、今回はあまりにジェットコースター・ムービーでありすぎ、話の順序もよく判らないまま進行してしまう。たとえば、物語のキーパーソンであるオックス(ジョン・ハート)の扱いの混乱ぶりなど、ご都合主義というのもおこがましいくらいいい加減である。
どうも話がスッキリしなかったのは、肝心のクリスタル・スカルの扱いのせいもあるだろう。今回の敵役である旧ソ連軍大佐にして超能力研究家でもあるイリーナ(ケイト・ブランシェット=どうもこの人は出演作によって印象が違いすぎ、いまだに顔をイメージできない)は、発見したクリスタル・スカルを「元の場所に戻すこと」により神秘のパワーを得られる、という話を信じ、それを実行しようとするのだが、インディたちとの間で争奪戦になっても、行く先が同じという結末に必然的になっしまうため、もうひとつ盛り上がらない。そこから目をそらすためだろう、手を変え品を変えアクションのつるべ打ちを見せてくれるのだが、目的も行き先も同じでは、ハリソンの老体に鞭打ってのアクションも、残念ながら空回りに見えてしまった。
イリーナによってあるべき場所に戻されたクリスタル・スカルは予想外のパワーを発揮し、舞台となっていたピラミッドをあとかたなく破壊し異次元へと消え去る。イリーナを破滅させるにはそれしか手がなかったのだと思うが、人類に知性と文化を与えたらしき異星人であるクリスタル・スカルが、どうして地球を去るときにああした破壊を行わなければならなかったのか、どこにも観客を説得させる要素がなかったのはやっぱり疑問だ。少なくともこれまでのシリーズでは、クライマックスの超常現象にはすべて納得できる意味づけがあったのだが。
後半のマリオン(カレン・アレン)の登場や、マット(シャイア・ラブーフ)との関係など、にやりとさせてくれるところもあるものの、もう少し別の展開もあったんじゃないか、と思ってしまう。お話の潤滑油として欠かせない裏切り者キャラもちゃんと登場してはいるが、これまたアクションに押されていかにもやっつけ仕事な裏切りを余儀なくされてしまっており(イリーナのために落としていった目印についていた点滅する赤ランプは、どう見てもLEDだが時代的にあるはずがない)結局「浅い」キャラで終ってしまった。うまく使えばこの話の中で唯一重心たりえる存在だったのに、もったいない限りだ。
スピルバーグがこのジャンル(ジェットコースター・ムービー)の創始者であることはいうまでもないが、だからこそ凡百の類似作品とは一味違うところを見せてもらいたかった。・・・
★★★★

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