「Project BLUE 地球SOS /岡村天斎;2006年テレビアニメ作品」
アニメーション
前回に引き続いて、地上波UHF放送にてようやく完結編まで観賞することができた。全体的に作画の乱れも少なく安定した雰囲気がよかったが、やはりこの内容で全6話(地上波放送ではそれぞれ前後編に別れていたので、全12回となる)ではやや駆け足気味なのが気になった。個人的には、冒頭の丁寧な描写が結果的に後半へのしわ寄せの遠因となったような感がある。もちろん、作品の世界観を視聴者に伝えるためには、ある程度きっちりとした描写が必要だったとは思うが、そのあたりはもう少し話を進めながらでも出来たのではなかろうか。具体的には第2話あたりをもっと詰めて、そのスペースを後半に当てたほうが、少なくともこれほどの「駆け足」感をもたらすことはなかっただろうと思われる。
気になったのはやはり、回が進むにつれて話の展開に飛躍が多くなり、新兵器が続々登場して来るあたりだろうか。新メカを次々と繰り出すことはこの種のアニメでは珍しくないが、伏線も何もなしにいきなり切り札となる新兵器が登場し、敵円盤を瞬時に撃破してしまうとなると、やはりご都合主義的な雰囲気は免れない。特に、最終話でいきなり登場するユニバースナイトあたりになると、正直言って「またかよ」と思ってしまった。「こんなこともあろうかと密かに準備していた」新兵器の登場は、ここ一番、というところで登場するからこそ効果的なのであって、メトロポリタンXを始めとしてああも次々登場されると、ちょっとげんなりしてしまう。せっかく中盤まで大活躍していたインビンシブル号なのだから、最終回でも使い回せるようシナリオを工夫すべきだったのではないか。
もうひとつの問題は、キャラクター描写の不備である。まあこれは、原作がマンガや小説ではない「絵物語」なのだから、ある程度仕方ないともいえるが、それにしても主人公の二人の少年の使い方があまりうまくなく、当初のライバル意識もすぐに話の流れに飲まれて、単に形だけの設定に終っていたし、主人公を助ける謎の男ジェームスにしても、最終回までその正体について引っ張っておきながら、ネタばらしはあっけなく終っていた。それ以外のキャラクターたちにしても、たとえば異星人によるラジオ電波で洗脳されてしまったロッタが、いかにして正気に戻ったのかという肝心な描写がなく、そのあたりも駆け足の印象を否めなくする一因であっただろう。
小松崎茂氏による原作にどこまで忠実だったのかはよく判らないが、いずれにしろ未完に終った作品なので、SF的な設定はほとんど番組オリジナルではなかったかと思われる。SFズレしたマニアには「お約束」としか言いようのない展開になってしまったが、あまりぶっ飛びすぎて一般人に理解できなくては身も蓋もないし、個人的にはこの設定もアリ、と評価しよう。少なくとも、ふだんSFにあまり興味のない人でもそれなりに納得できるお話にはなっていたと思う(「シノニム」という、生物学を少しでもかじった人間なら誰でも知っているような単語を、まるで判っていなかったのはちょっと感心しないが)がさつなアニメの氾濫する現在、このような製作者の良心をうかがわせる作品は、やはり積極的に評価すべきだろう。・・・
★★★★

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