「東のエデン 劇場版 I The King of Eden/神山健治;2009年劇場公開作品」
アニメーション
テレビアニメ「
東のエデン」の続編。日本中にミサイルが降り注いだ例の事件から半年後の後日談が描かれる。事件の中心人物であった滝沢朗(木村良平)は再び行方をくらまし、その手がかりを求めて咲(早見沙織)は単身ニューヨークに渡る。到着早々、彼女を待ち受けていたのはライバルのセレソンによる妨害工作であった・・・。
なにしろテレビ版で積み残した謎があまりに多すぎたので、映画一本分では収まりきらず、前後編の二部構成になったのだが、おかげで前編に当たる本編はまったくの「つなぎ」扱いになってしまい、一本の映画としては少々辛いものになってしまった。上映時間も82分と劇場用映画としてはやや短く、事実上一話20分程度のテレビアニメ三回分をまとめて見せられた感じ。映画には映画なりの構成があり、山場をどこに設定するのかが監督の手腕の見せ所なのだが、どうも説明的に淡々と流れすぎ、のめり込めない。
同じつなぎでも、たとえば「
スターウォーズ 帝国の逆襲」みたいな傑作だってあるわけだから、宿命的につまらなくなるわけではない。要は、物語をどう語るのか、どれだけ「けれん味」を詰め込むことができるのか、なのである。神山監督の作品ということでやや期待しすぎてしまったのかもしれないが、彼ならもう少しうまく料理できたはずだと思うと、ちょっと残念だ。
以下ネタバレあり、まだ観てない人は読まないように
以下は劇場版 II Paradise Lost 鑑賞後の感想である。
ひとことで言ってしまえば「パート1、いならかったんじゃね?」ということ。本編で語られるべき重要な要素といえば、滝沢朗がふたたび記憶をなくし、就任後すぐ死んでしまった飯沼総理の隠し子、飯沼朗として再登場することと、セレソンNo.1物部がゲームの上がりを焦って、他のセレソンのジュイスを個別にミサイル攻撃し始めることくらい。双方ともパート2の冒頭で簡単に述べるだけで事足りる。
後知恵を承知で書けば、もし前後編で作るなら、むしろパート2の内容をもっと膨らませ、広げすぎた風呂敷を畳みつつも新たなアクション(当然規模的にテレビ版を上回らなければ意味がない)を追加して、劇場版ならではの「お値打ち感」を加味すべきだったと思う。テレビ版からの一貫したテーマに従えば、やはり現在の日本というシステムの破壊は必然だと思うし、それなしに「みんなで力を合わせればなんとかなる」という朗の結論めいた言葉も、国民の耳に届くことはないだろう。
そうした「血を流す」作業を「愛がない」という情緒的なひとことで回避してしまった朗に、このあとなにか成し遂げられる可能性はあまり感じられなかった。せっかく物部というヒールを作り出し、ファシズム的側面をまる投げできる環境を作ったのだから、負の要素をすべて彼に背負わせた上で朗がおいしいところを全部掻っ攫う、という展開の方が、ありがちではあっても判りやすい作品になったような気がする。・・・
★★★

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