「東のエデン/神山健治;2009年テレビアニメ作品」
アニメーション
フジ木曜深夜の「ノイタミナ」枠で放映されたアニメーション。「萌え」旋風後のアニメはほとんど観る気がしなくなり(嫌いというわけではないのだが、どうにも興味が湧かない)結局今期視聴した唯一のアニメ作品となった。本編とてキャラ設定を羽海野チカ(まんが「ハチミツとクローバー」原作者)が行うなど、「萌え」要素がないわけではないが、なにしろ「攻殻S.A.C.」の神山健治が監督をつとめるのである。これは観ないわけには行かない。
しかし、最近の「ノイタミナ」枠は「もやしもん」にしろ「図書館戦争」にしろ、わずか10回ちょっとのミニシリーズとして放映されており、製作陣の油が乗りかけたころにはもう終わってしまうという不完全燃焼状態が続いていた。そして本編も、最終回の今回が放映11回目、複雑な設定の世界観をほとんど消化できないまま終ってしまった。放映後、秋から来年にかけて二本の劇場版が公開され、その中で積み残された謎が解明される、ということが発表されたが、こういうやり方が果たして本当に正しいのか、ちょっと疑問である。
作中で明らかにされなかった謎はとにかく枚挙に暇がない。物語の骨格を成す「セレソン」と呼ばれる人たちの人選がいかにして行われたのかも謎のままだし、タイトルに登場している「エデン」システムにしろ、アイデアこそ既知のものを組みあわせたものに過ぎないが(GoogleやWiki、そして顔を認証するセキュリティ・システムなど)携帯電話の通信網にリンクさせてデータベース化できれば、それこそ究極のディストピア社会の誕生である。携帯カメラに(たとえ背中からでも)写されただけで、その人の個人データが丸裸にされるのだ。これほどのものが、作中ではほとんどバックグラウンドとしてしか描かれなかったのには何かわけでもあったのか、あるいは劇場版への布石なのか。
また、主人公の滝沢朗をはじめとするセレソンたちには、「日本を正しい方向に導く」必要経費として、それぞれ100億ほどの現金が携帯(「ノブレス携帯」と呼ばれる特殊な携帯電話)にチャージされるのだが、100億という金額は、個人にとってはもちろん大金ではあるものの、国を相手に何かしようとするにはあまりにも些少だ。なにしろ、ジェット戦闘機一機すら買えない額である。作中で滝沢がホテルを丸ごと買い取る描写が出てくるが、本当に足りるのか、心配になったほどである。セレソンが何千人もいる、というなら別だが、わずか10人ちょっとの人数なら、最低でもその10倍の金額を支給しても、桁違いの大富豪らしいMr.アウトサイドの腹はさほど痛まないと思うのだが。
個人的に気になったのはパンツこと板津豊のその後の運命だが、「ハカナ過ギタ男」の「ハカナ」とはそういう意味だったのか、と、最終回で思い当たったのであった。こういうところが好きで、僕は神山監督の作品というと期待してしまうのである^^;・・・
★★★★

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