「スキージャンプ・ペア Road to TORINO 2006/真島理一郎・小林正樹;2006年劇場公開作品」
映画
本編は監督の一人、真島理一郎がデジタルハリウッド(デジタルコンテンツ製作を教える専門学校)の卒業製作を商品化したDVD作品「スキージャンプ・ペア」をみずから映画化したものである。基本的には、スキージャンプ・ペアという架空の競技を成立させるための世界観を、映画という媒体を使って描いたものだが、残念ながらもうひとつ説得力に欠け、特に猪木の登場など、ショーアップのための演出が見えすぎてしまって、笑えない作品になってしまった。
設定を作った当人はこれをSFとして描いたわけではないだろうが、それにしても物理学者、原田教授のパピコを使った「氷点下の状態における有機物の運動」理論は、どうしようもなくナンセンスな上に(氷点下でものが倍になるなら、全世界の冷凍庫の中身は倍増し、食料難も一気に解決だ^^;)まったくスキージャンプ・ペアの説明になっていない。物理学者とスキージャンプ・ペアという荒唐無稽なスポーツとの接点を無理矢理作りたかったのだろうが、せめて量子力学ではなく流体力学が専門の物理学者、とでもしておけば、これほど無理な、というより無意味な屁理屈を展開する必要もなかっただろう。
もちろん映画が見せたかったのは終盤に登場するスキージャンプ・ペアの実演シーンなのだが、ここは既発売DVDのCGをほぼそのまま流用しており、それまでのライブアクション、つまり普通の映画の部分との違和感が強烈だった。こんなことならいっそのこと、前半の「ドキュメントJAPAN 2006」そのそのもオールCGで作るべきだったかもしれない。もっともその場合、ご本人(船木和喜や荻原次晴)を登場させてまで演出したかった説得力は著しく縮小してしまうことになるが。
逆に実演シーンのCGをブラッシュアップして、現実と見分けがつかないほどに仕上げるという選択肢もあるが、このCGのおかしさにはCGならではの無理な動きも含まれているので、あまり自然に仕上げてしまうと角を矯めて牛を殺す結果にもなりかねない。
エイベックスから発売されたオリジナルDVDは、続編が何本も作られるほどのヒットとなったようだが、その映画版である本編は、個人的には時間の無駄としか評価できない、くだらない作品というしかない・・・
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