「24-TWENTY FOUR シーズンVI/ジョン・カサー他;2007年アメリカTVシリーズ」
映画
人気シリーズもとうとう第六シーズン、さすがにマンネリの色は隠せない。それを吹き飛ばすためか、今回は序盤でテロリストの仕掛けたスーツケース型核爆弾が爆発し、一気に1万人以上の犠牲者が出てしまう。これまでも爆弾テロによる旅客機の墜落や原発のメルトダウンなどで多数の犠牲者が出てはいたが、今回は桁違いである。
物語は、前作のラストで中国側の諜報員に拉致されたジャック・バウアーが、二年にわたる過酷な捕虜生活の後、国家間の裏取引でアメリカ側に引き渡されるところから始まる(毎度のことだが、この手の軍事スリラーに登場する中国の扱われ方は酷い。まるで、かつての黄禍思想がいまだに存続しているかのようだ)その頃アメリカは、イスラム系のテロリストによって自爆テロの嵐に見舞われていた。事件の首謀者はハムリ・アル=アサドという男で、その腹心の部下が彼を裏切り、潜伏場所を教えるのと引き換えにジャックの身柄を要求してきたのだ。実はその男、ファイエドの弟はジャックの作戦により命を落としており、彼は復讐を果たすためにジャックの身柄を要求したのである。しかし、その裏にはさらに複雑な国家間の思惑が隠されていた・・・。
毎回、視聴者の予想を裏切ることに命をかけているとしか思えないライターによって、今回もレギュラーとして生き残りそうに見えた人物が何人か命を落とす。ドラマの終盤、ヘラー上院議員(ウィリアム・ディヴェイン)によって語られるとおり、ジャックに関わる人物は結果的にほとんど生き残っていないのだ。製作者によると、マンネリ化を防ぐために常に登場人物を更新したい、ということらしいが、いくら人を代えても、設定が似ている以上どうしてもマンネリ化は避けられないと思うのだが。
それでもマンネリ化を避ける意欲なのか、今回は以前にも増してキャラクター描写が重層的になり、テロリスト一味を別にすれば決定的な悪役は登場しない。一度はアメリカを核戦争の瀬戸際まで追いやってしまう副大統領ノア・ダニエルズ(パワーズ・ブース)にしろ、判断を誤っただけでけして悪人としては描かれていないし、大統領補佐官トム・レノックスに至っては、当初のいかにも悪玉っぽい登場の仕方が嘘のように、とことん誠実かつ有能な人物として描かれている。
アメリカのテレビ映画をよく見る人間にとっては、テロリストの元リーダー、アサド役にスター・トレックDS9でお馴染みのアレクサンダー・シディグ、トム・レノックス役にアリーmyラブの変人弁護士ジョン・ケージ役で有名になったピーター・マクニコルが配役されているのが嬉しい。
以下ネタバレあり、まだ観てない人は読まないように
ところで、このシリーズではいつものことだが、何かの伏線らしき描写がありながら、最後まで観てもそれが解消されないまま終る、というパターンがけっこうある。今回で言えば、ジャックを絶体絶命の窮地に追い詰めた父フィリップが結局彼を射殺しないまま去り、そのあとに残された携帯電話に添付された番号にかけると、出たのはローガン元大統領であった、というのが第10話の引きなのだが、フィリップが何の目的でジャックとローガンを結び付けたかったのか、最後まで判らなかった(ふたりがパーマー元大統領暗殺に関わっていたことは明かされているので、つながりがあること自体は不思議ではないのだが、ここで引き合わせる意味が不明なのだ)
もっと細かいところでは、第13話で夫人に刺されて救急搬送中のローガンが心停止した後の描写がなく、結局どうなったか判らない(このあとのエピソードで使う可能性があるので、あえて生死不明にしたかったのか?)し、第22話でマイロの遺体を引き取りに来た彼の兄がCTU内部で行方不明になるのだが、それも行方不明のままだった。聞くところによると、本編のシナリオは撮影中にも適宜書き直されることが多いらしいので、いくつも張った伏線のいくらかは、結局使われることなく終ってしまうのかもしれない。・・・
★★★★

0