神戸市北区に本社を置き北神線(新神戸〜谷上間7.5km)を運行している、阪急阪神ホールディングスの連結子会社でもある鉄道会社「北神急行電鉄」については、
昨年7月24日の記事でも取り上げましたが、その北神急行が、本日、神戸市に譲渡される事が正式に決まりました。
神戸市と、北神急行の親会社であり筆頭株主である阪急電鉄は、北神線開業時から相互直通運転が行われている神戸市営地下鉄と北神線の完全な一体的運行の可能性(阪急阪神東宝グループから神戸市への資産譲渡)について、昨年12月から協議を行ってきましたが、今日、神戸市が阪急から、北神線の駅や車両、トンネルなど北神急行に関係する資産(簿価約400億円)を198億円(税別)で譲り受ける事で基本合意したのです。
これにより、北神急行は市営化される事になり、その北神急行が運行している北神線は、遅くとも来年10月までには神戸市営地下鉄の一部になる事となります。
近年は全国的に、様々な公営事業が民営化される流れにあり、それは鉄道も例外ではなく、最近だと、大阪市営地下鉄を運行する大阪市交通局が民営化されて大阪市高速電気軌道株式会社(通称:大阪メトロ)に組織改編された事例がありましたが、今回のケースは、そういった昨今の流れとは明らかに真逆で、民間の株式会社が公営化されて市営になるという、非常に珍しい事例となります。
ちなみに、私が住んでいる札幌市では、それまで地下鉄・
路面電車(市電)・バスを運行していた札幌市交通局が、今から15年前にバス事業から撤退し、市営バスの路線・車体・施設などは、全て民間(ジェイアール北海道バス、北海道中央バス、じょうてつバス)に譲渡されました。
以後、札幌市交通局は地下鉄と路面電車のみを運行する鉄道事業者となり、現在に至っています。
30年前に開業した北神線は、全区間の大半が六甲山を南北に貫く山岳トンネルであるため、トンネル整備などで建設費が膨らみ、初乗り運賃(新神戸〜谷上間)は460円と大変割高に設定され、それが、神戸市都心の
三宮まで約10分という優れたアクセス性を有するにも拘わらず乗客が伸び悩む大きな原因と言われ続けてきました。
そのため神戸市と兵庫県は、高額な運賃を引き下げて神戸市北部の人口減に歯止めをかけ北部地域の活性化を図るため、平成11年から運賃補助などを行って北神急行を支え、それにより初乗り運賃は460円から360円へと値下がりしましたが、それでも、運賃360円は依然として「初乗り運賃としては日本一高い」のが実態です。
しかも、新神戸を境に鉄道事業者が異なるため、両者の区間に跨がって乗車すると、当然の事ながら運賃は合算となりますから、地下鉄山手線の三宮から北神線の谷上まで乗車すると、乗継ぎ割引適用でも540円もかかるのです。
このため、新たな運賃軽減策として、神戸市は昨年、阪急に北神急行の事業譲渡を提案し、一方の阪急も、その提案は、グループの重要な事業拠点である三宮の活性化に繋がるものと考え、両者の交渉が始まっていたのでした。
この度の事業譲渡合意により、神戸市は、市営地下鉄の山手線・西神線・西神延伸線と、北神急行の北神線、これら全てを同一事業者の路線として完全に一体運用出来るようになり、これにより、三宮〜谷上間の運賃540円を、現在のほぼ半額となる280円にまで下げる方向で、今後、関係機関と協議を始めるとしています。
神戸市と兵庫県が現在の運賃補助と同水準の支援を30年間続けた場合、「運賃を大幅に下げても健全な経営が維持できると判断した」との事です。
なお、北神急行は神戸市に譲渡されて市営化されますが、約650億円に上る負債は神戸市には引き継がれず(それは阪急が背負います)、阪急阪神ホールディングスは、本年3月期に北神急行関連の売却損約190億円の減損損失を計上するとしています。

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