「北海道新幹線が新青森〜新函館北斗間で先行開業しました!」
北海道の鉄道
青森県青森市から北海道札幌市(但し基本計画では旭川市)までを結ぶ計画の、全国新幹線鉄道整備法に基づく整備新幹線5路線のひとつ「北海道新幹線」が、丁度1週間前の先月26日、新青森駅〜新函館北斗駅間(約149km)で先行開業しました!
下の写真2枚は、札幌への延伸開業まで暫定的に北海道新幹線の終着駅となる新函館北斗駅のホームで開業日の朝行われた、北海道新幹線の上り一番列車「はやぶさ10号」の出発式の様子です。石井啓一 国土交通大臣、高橋はるみ 北海道知事、島田修 JR北海道社長なども出席しました。
北海道新幹線の開業により、日本の国土を縦断する“背骨”とも云える最重要交通基幹の新幹線が、ついに津軽海峡を越えて北の大地・北海道を走るようになり、初めて本州と北海道が新幹線で結ばれました。
私自身は、どちらかというと個人的には、新幹線や
リニアなどの高速鉄道よりも、
蒸気機関車や
ブルートレインなどの郷愁が感じられる列車のほうが好きなのですが(笑)、そんな私にとっても、自分が生まれ育ち現在も暮らすこの北海道にもついに新幹線が走るようになったのかと思うと、やはり感慨深いものがあります。
なお、北海道新幹線は新青森で東北新幹線と接続しており、早速開業と同時に北海道・東北両新幹線の相互直通運転も始まった事から、首都圏(東京駅)と道南(新函館北斗駅)の間約830kmも新幹線としては初めて、名実共に1本の線路として繋がった事になります。新幹線は全区間が複線なので、正確には1本ではなく2本の線路で繋がったと言うべきかもしれませんが(笑)。
北海道新幹線は、当時の日本の最先端土木技術を結集し国家の一大プロジェクトとして津軽海峡の海底下に建設された、全長53.9kmを誇る世界最長のトンネル「
青函トンネル」の存在を抜きに語る事は絶対に出来ませんが、その青函トンネルの開業(昭和63年)からは約28年という時を経て、そして、全国新幹線鉄道整備法に基づいて建設を開始すべき新幹線として政府が青森市〜札幌市間の整備計画を決定してから(昭和48年)は約43年、青函トンネルの本工事着工(昭和46年)からは約45年、世界初の新幹線である東海道新幹線の開業(昭和39年)からは約52年、青函トンネル建設の大きなきっかけとなった
青函連絡船洞爺丸の沈没(昭和29年)からは約62年という、実に長い歳月を経て、ついに、北海道新幹線が開業しました!
しかし北海道新幹線の今後は、残念ながらとても順風満帆とは言い難く、これから克服・改善していかなければならない課題も多くあります。細かく挙げるとまだ沢山あるのですが、直ぐに思い浮かぶだけでも、とりあえず以下の4点を挙げる事が出来ます。
@ 北海道新幹線は赤字が避けられない厳しい経営構造で、JR北海道にとって、当面は年間48億円の赤字が続く見込み。ただでさえ経営状況が厳しいJR北海道にとってこれはかなりの負担。また、北海道新幹線開業によってJRから経営分離された在来線(江差線)や、今後の北海道新幹線延伸によってやはり経営分離され恐らく第三セクター化されるであろう在来線も、当然ながら相当厳しい経営を強いられる。
A 東京〜新函館北斗間の所要時間が最速でも4時間2分というのは長過ぎる。利用者が新幹線か飛行機かを選ぶ目安とされる「四時間の壁」を今後いかに克服していくかも大きな課題。技術的には十分スピードアップが可能であるにも拘わらず(実際、東北新幹線の宇都宮〜盛岡間では320km/h運転を行っている)、整備新幹線の区間(盛岡〜札幌間)は最高速度が260km/hに制限され、更に青函トンネルの区間は貨物列車との共用のため当面140km/hに制限される。北海道新幹線は最新の新幹線のはずなのに、50年以上も前に建設された東海道新幹線よりも運転速度が遅いという矛盾が生じている。ちなみに、東海道新幹線の現在の営業運転での最高速度は285km/h。
B 北海道新幹線の先行開業区間(新青森〜新函館北斗)は、全体の3分の1が青函トンネルという特殊な環境にある事に加え、厳冬期の過酷な環境下で運用され、更に在来線との共用区間(三線軌条区間)も長いため、従来の新幹線以上の複雑な運行管理と高度な保守点検が必要で、どうしても障害の発生するリスクが高くなる。
C 北海道新幹線が新函館北斗から札幌まで延伸し、当初の計画通り全線開業するのは15年程先の見込みだが、これでは時間がかかり過ぎる。函館は、東北新幹線終着駅のある青森市よりも人口が多く、日本有数の観光都市でもあるが、新幹線にとっては重要な顧客となるビジネス用途の乗降客はそれほど多くはなく、そのため函館(新函館北斗)が発着駅という現状では、そもそも大きな需要が見込めない。北海道最大の拠点で人口約200万人を擁する大都市・札幌まで延伸しなければ、乗客の大幅な増加は期待出来ない。現状では、札幌〜新函館北斗間は在来線を使って移動する必要があり、時間がかかる上に乗り継ぎも面倒。
…などという問題や課題もあるのですが、兎も角今は、北海道民のひとりとして、私もこの度の北海道新幹線開業を、心から祝福したいと思います!
今後は、札幌までの開業時期の前倒しについても、今まで以上に更に具体的に論じられていく事になるでしょう。
下の写真は、先月妻が札幌市内のファーストフード店で私に買ってきてくれた、道内店舗限定販売の「北海道新幹線H5系セット」です。北海道新幹線のオリジナルクリアファイルと、バーガー(リブサンドポーク)を入れる事が出来る、北海道新幹線の車両を模したオリジナルボックス(ペーパークラフト)が付属していました。
北海道新幹線の開業が迫るにつれ、最近はこのような新幹線関連の商品も増えてきました。
ところで、今回の北海道新幹線開業を報じるいくつかの報道の中に、「これで、北海道から九州まで初めて新幹線の線路が繋がった」といった表現が用いられている例をいくつか見ましたが、この言い方は、やや正確さを欠きます。
確かに、北海道新幹線と直通する東北新幹線の電車と、九州新幹線や山陽新幹線と繋がっている東海道新幹線の電車は、どちらも東京駅に乗り入れているため、東京駅という同一の駅で乗り換える事が出来ますし、東北新幹線のホームと東海道新幹線のホームは隣接もしています。しかし、隣接はしていても、東北新幹線と東海道新幹線は、ホームも線路も繋がってはおりません。繋がっていないので、当然直通運転はしておらず、現状では、今後もその予定はありません。
東京駅に於ける東海道新幹線の14・15番線については、当初は東北新幹線との直通も考慮されていたようで、今も線路は先に延ばしやすい(そのまま上野方面に延びて東北新幹線に接続しやすい)構造にはなっていますが、結局伸ばされる事はなく、線路は行き止まりのままです。
東北新幹線と東海道新幹線の線路を繋げて、両新幹線が東京駅を跨いで直通運転をするメリットは確かにあるのですが、そのメリットは、デメリットを補える程多くはないであろう事から(具体的には、東北新幹線と東海道新幹線は、電源、デジタルATC、運行管理システムなどが異なっており、全てを両対応にするのは技術的には不可能ではないもののコストがかかり過ぎ、また、両新幹線を直通する列車のダイヤが乱れた時、関ヶ原での遅れが東北新幹線や北海道新幹線にまで波及し、その混乱を収拾する処理も非常に複雑になる、など)、今後も東北新幹線と東海道新幹線の線路が繋がる事は、状況が余程大きく変化しない限り、まず無いと言ってよさそうです。
もし、国鉄が分割民営化されていなければ、つまり、東北新幹線と東海道新幹線の経営母体が分かれていなければ、その可能性も少しはあったかもしれないですが。
ところで、北海道新幹線開業の華やかなニュースに隠れてほとんど報道されていないようですが(多分函館圏では報道されているのでしょうが)、北海道新幹線開業に伴う並行在来線の経営分離により、先週から、JR江差線(五稜郭〜木古内間約37.8km)を引き継いだ第三セクターの「道南いさりび鉄道株式会社」も、営業を開始しました。
北海道では、JR池北線を引き継いだ第三セクター「北海道ちほく高原鉄道株式会社」のふるさと銀河線廃止(平成18年)以来の私鉄線となります。
今後はかなり苦しい経営が予想されますが(最初から黒字化が十分見込める路線であるならそもそも経営分離はされません)、江差線改め道南いさりび鉄道線が、引き続き地元の足として、そして、日本の物流を支える大動脈(同線では旅客列車よりも貨物列車のほうが多く運転されます)として、末永く利用される事を、私としては強く祈念します。
ちなみに、青森県の津軽半島(北海道新幹線の区間でいうと新青森〜奥津軽いまべつ間)では、北海道新幹線と在来線の津軽線が並行する事になりますが、北海道新幹線はJR北海道、津軽線はJR東日本と、両路線では鉄道事業者が異なるため、津軽線については並行在来線とは見なされず、経営分離はされません。津軽線は今後も引き続き、JR東日本により運営されます。

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