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「上海領事館員の自殺のエントリー」に以下のようなコメントを頂きました。中国側の脅迫を棚上げして、自殺した領事を批判する言説はネット上でもよく見られますので、『週刊文春』の記事をみながら考えてみたいと思います。
投稿者:民主主義至上主義者2005/12/30 4:39
この電信官が女のことで、しっかりしていれば、このようなことは容易に起こらなかったはずで、外務省内部の風紀がくずれているのではないか?
もし、国家機密がその重要度の如何に関わらず、漏洩しているとすれば、漏洩に加担した者を処罰する制度が必要だろう。
外務関係の職務に就いている公務員がどんな機密情報であっても、国外の組織に漏らさないのは、当たり前のことであって、国民の税金で身分を保証されている公務員がその国民に害を及ぼしてやろうと画策している外国人を利する行為は、その大小に関わらず、容認できない。
彼の自殺の原因が低レベルの機密漏洩であったとしても、与えられた任務から外れ、母国を裏切るような官の人間を擁護することなどできやしない。ただ、彼が重要な国家機密を漏洩しなかったのは、不幸中の幸いだっただけだ。
従って、「最終的に自らの命よりも『国家と家族』を守りたい」と述べるグース氏には、理解しかねる。そもそも国家を守りたいと考える者なら、機密漏洩はしないだろうし、家族を守りたいというなら、自ら家庭を壊すように、わけのわからん女と関係を持つこともなかっただろう。
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(1)まず、外務省の風紀が乱れているというのはその通りだと思います。親中のチャイナスクール関係者は一掃しての抜本的な改革が必要だと思います。ただし、過去において日本国の世論が中国という共産党独裁国家に媚びてきたのも事実ですから、
国民の意識改革も必要です。
(2)自殺したA領事がどの程度の情報を漏洩したのかは不明ですが、文春の記事で触れられている「総領事の評判」や「要員名簿」などは国家の安全保障に関わる問題ではなく、中国側も調べれば分かるレベルですので大きな問題ではないと思います。
ただし、相手が知っている程度の情報(名簿など)でも「情報を漏らした」という既成事実は残りますので、
漏洩しても害がないもの、漏洩したら罰せられるものを情報の重要度にわけて決めることは必要だと思います。
余談ですが、戦時中の日本では、兵士に「捕虜になるな」とは教えましたが、捕虜になった時のことを教育していませんでした。その結果、捕虜になった兵士は「提供していい情報」と「提供する必要がない情報」の区別ができず、「提供する必要がない」機密に関わる情報でも抵抗なく話す例が多かったということです。
(3)中国の法律には詳しくないのですが、伝え聞くところによれば「女性が接待してお酒を提供」するようなお店は原則違法だそうです。もちろん売春・買春も違法ということですから、A領事が中国の法律に違反したことは事実だと思います。
同時に、
中国側の行った脅迫は「国際違法行為(ウィーン条約違反)」と考えら、A領事の行為とは比較にならないほど重大かつ悪質な行為ということになります。
(4)現在判明している情報によれば、A領事が提供したのは「機密」に該当するような情報ではないと思います。買春行為が中国の法律に違反したとしても、自殺しなければならないような問題ではありませんし、奥さんが許せば家庭が崩壊することもありません。
A領事が自殺しなければならなかった理由は以下を参照して下さい。
■中国側の脅迫
『週刊文春』の記事によれば、A領事は
同僚に連れられて行った「かぐや姫」というカラオケクラブ(実質的には
売春クラブ)で「劉」という女性と知り合った。後に劉は売春容疑で逮捕され中国当局の取り調べを受けた。当局は
『客の名前を言え。でなければ辺境に送って強制労働させる』などと劉を恫喝し、その過程でA氏が領事であることをつきとめ工作の対象にしたとされています。
劉さんの必死の懇願によってA氏は中国の情報部員と接触することになりますが、当初は「領事館の要員表」や「杉本総領事の評判」など、中国当局も知っているレベルの機密性の薄い情報を聞き出していたのではないかと、当時の上海領事館員は語っています。
最初はどうでもいい情報を聞き出し『情報漏えいの既成事実』とする。その後に重要な機密を要求するという手口が常套手段だったようです。重要機密を要求されて困ったA領事は、外務省に転属願いを出します。四月末には
ユジノサハリスクに転属が決まっていました。
ところがA領事は転属がきまったことを劉さんに話してしまいました。
以下『週刊文春』からの引用です。
『週刊文春』一月五日、十二日号より
劉からA領事の異動を聞いた唐らは、掌を返したように、A領事を責め立てた。「お前のことはいろいろ気を使ってやったのに、どうして異動することを教えなかった? 一ヶ月前には申請していたらしいじゃないか。どういうことだ?」
唐らは数日にわたってA領事を「我々に協力しなければ劉との関係を領事館だけではなく、本国にバラす」、「おまえと劉の関係は我が国の犯罪に該当する」などと脅し続けた。
彼らの恫喝は周到かつ徹底したものだった。現地の公安当局ともパイプをもつといわれる杉本総領事が、ゴールデンウィーク休みで帰国していた時期を見計らって一気に攻勢をかけてきたのだ。唐らは最後にこう凄んだという。
「まぁ、いい。お前がユジノサハリンスクに行っても付き合おう。我々もロシアについては色々知りたい。我々は一生の"友人"だからな」
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一応、当時の上海領事館関係者の証言を元に構成されているので、証言者の主観で語られている部分がありますが、概略はこんなものだと思います。
この記事を見て、A領事が自殺した原因が理解できたような気がします。
ロシアに転属してもそこに中国の情報部員がやってくる。どこの国に転属してもこれは変わらないだろう。外務省を辞めて「日本に帰ったとしても」中国側の脅迫は続くだろう。
暗号システムという機密を知っている限り脅迫は続くだろう。
外務省にすべてをぶちまけたらどうなるか?
外務省の上層部には「チャイナスクール」の媚中派が多い。
自分は確実に処分されるだろうが、中国側が脅迫を行った事実は隠蔽されるだろう。とても自分を守ってくれるとは思えない。
私人となってしまえば誰も守ってくれるものはいない。
日本にはスパイ防止法がない。
中国のスパイは日本国内にうようよしている。
日本に帰れば家族の命を狙われるかも知れない。家族の命と引き換えに「暗号システム」という機密を要求されたならば、機密を守り続ける自信がない……
筆者のレベルでもこの程度の想像はできます。外務省の内部事情に詳しいA領事が、
物凄い孤独感に襲われたことは想像に難くありません。
むしろ、自分が命をかけなければ
「中国という国家の卑劣さ」を訴える方法がないとすれば
「自殺という方法を選んで国を守った」ということになると思います。
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参考資料
中国も対外工作活動を積極的に展開しているとされる。今年五月、在シドニー中国総領事館で働いていた一等書記官がオーストラリアへ亡命申請し、雑誌のインタビューで、日本国内で活動している中国のスパイは千人を超えると証言。警察庁が昨年、警察法施行五十周年を記念してまとめた特集では、中国の情報収集活動について「機関員が前面に出ることなく、日本人エージェントなどを活用するなどの方法で、諸工作を展開している」と分析している。
(産経新聞) - 12月29日2時31分更新
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