前回の衆院選ですが、マスコミとか民主党陣営の論調では、小泉首相が争点を郵政民営化に絞ったことが自民党の勝因であって、(年金問題などの)政策論争にならなかったことが敗因という分析をしているようです。
では年金問題にしぼれば民主党は勝利できたのでしょうか?
この点をちょっと考えて見ましょう。
年金給付費、初の40兆円超 保険料は5年連続減
2005年11月29日 (火) 18:18
社会保障審議会年金数理部会は29日、公的年金制度全体の2003年度の財政状況報告をまとめた。高齢化の進行による受給者の増加で、給付費は前年度比2・8%増の40兆2821億円となり、初めて40兆円を超えた。保険料収入は賃金下落などの影響で同3・4%減の25兆4618億円と、5年連続のマイナス。
(略)
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■年金支給額と税収は拮抗
年金の支給規模は約40兆円です。
平成17年の歳入見込みが約44兆円ですから、すでに
年金と税収は同じくらいの規模になっているんですね。
少子高齢化が進んだ結果、年金の受給者は増える一方で、負担する若者は年々減少していく。この構図がある以上、年金や老人医療費については
「改革」せざる得ないんですね。具体的に言うと、
「負担を増やすか、給付を削減する」これしかないんですね。この程度は一般的な国民でも理解していますから、「改革を止めるな!」という自民党が支持を集めてもなんら不思議ではありません。
■民主党の政策・年金一元化と消費税
民主党は
年金を一元化して消費税でまかなうという政策を打ち出しました。今のところ消費税1%は大体2兆円くらいですから、年金支給額
40兆円を全部を消費税でまかなうとすれば、単純計算で消費税率は20%となります。消費税による目減り分を考慮すると
23%くらいになります。
細かい修正はあるのでしょうが、要するに
民主党の打ち出した年金政策というのは「消費税を20%以上にするよ」という政策なんです。
消費税というのは、貯蓄ができる金持ちほど影響が少なく、所得のほとんどが消費に回る
低所得層には厳しい税です。消費税は「赤ちゃんから、老人まで負担する税」であり、免除とか延納ということはできません。
国民年金なら免除とか延納とか、最悪の場合、滞納という手段で生活費を捻出することが可能ですが、
消費税となるとこういうことはできなくなります。生活費がどうしても足りない場合、借金するか、犯罪に走るか、あるいは飢え死にするか、という選択になるのです。
■民主党案の幻想
以上のように、民主党(案)が特別優れているわけではなく、民主党案が採用された場合、現状よりも生活が悪くなる可能性が高いんですね。また消費税が20%以上というのは日本経済にも大打撃を与えます。
橋本内閣が消費税を3%から5%にしただけで、回復基調にあった日本経済が失速してしまったことを忘れるにはちょっと早すぎると思います。
■消費税と景気の関係
消費税がなぜ経済に悪影響を与えるのかを簡単に説明すると
「資本が利益を生む前に税金が取られるから」です。
例えば、お店を始める為に店舗を借りるとします。契約手数料や家賃にも消費税はかかります。また、商材の仕入れや、内装工事、棚などの什器、POSシステムなどを購入しても消費税がかかります。営業が始まれば光熱費にも消費税かかります。
赤字で撤退ということになっても支払った消費税は戻ってきません。当然ながらお店の売り上げに対しても課税されることになります。
このように、まだ利益が出てない段階で「資本金」が目減りするから、消費税を上げると経済が失速するわけです。新店舗の出店や起業する為のハードルが高くなるんです。しかしながら官僚や政治家は、実際にお金がどのように動いているのか実感がないので、机上の計算だけで消費税を上げたくなっちゃう。ここが問題なんです。
こういう風に考えると、谷垣財務相や与謝野政調会長が、安易に「消費税を上げる」と言って、党内で袋叩きにあった理由が何となくわかるのではないでしょか。要するに
(1)企業が体力を蓄えて、(2)雇用が安定してからでないと消費税は上げられないのです。
■国民は意外と賢い
こういった議論は「2ちゃんねる」などでも見かけますし、実際に経営に携わっていれば、理論として理解していなくても肌で感じるものなんですね。ですから、
年金一元化とその財源に消費税を持ち出した民主党が、年金を争点に選挙をやっても負けた可能性が高いと言えます。 むしろ
年金問題こそ民主党の敗因ではないかと筆者は考えています。
■政権選択の結果
自公連立が続く以上、民主党(野党)が政権を取る為には(1)最低でも投票率が65%を超えて、(2)小選挙区で野党間の選挙協力が完璧に行われ(2)無党派層の7割が民主党に投票するという必要があります。
有権者数は約一億人ですから、投票率60%なら6000万票の争いとなります。「自民党・公明党で3000万の基礎票」があるので、投票率60%なら浮動票が全部野党に流れても、(選挙協力が堅い)与党有利となります。
つまり民主党が政権を取る可能性はほぼ0であり、仮に政権を取れるとしても民主・公明党その他との大連立でかろうじて過半数を超える程度なので安定した政権運営は期待できませんし、このご時勢不安定な政権を国民は望まないでしょう。つまり民主党は負けるべくして負けた、ということが言えると思います。
そんなこんなで国民は自民党、小泉内閣を支持したわけですが、全体的にみると雇用も回復基調にあり、株価も上がっています。要するに結果が出ていますから国民の選択は賢かったということになると思います。
景気回復についての報道
雇用情勢好転 人手不足に 脱デフレの足音【上】
「景気の強さ」には不安も
日銀の展望リポートは31日、消費者物価指数が8年ぶりにプラスに転じる見通しを示し、デフレ脱却の足音が近づいてきた。企業の収益増、雇用の改善、消費拡大という景気の好循環も力を増している。転機を迎えつつある景気回復の現状を探る。 (略)
国の今年度税収、47兆円規模の見通し
2005年度の国の税収(一般会計分)が当初予算で見込んだ44兆円を3兆円近く上回り、47兆円規模になる見通しになった。
景気回復の強まりで、所得税、法人税、消費税の基幹3税の税収が前年より伸びているためで、国の税収が当初見込みを上回るのは3年連続となる。
(2005年12月2日0時0分 読売新聞)
日経平均続伸、5年2か月ぶり1万5400円台回復
2日の東京株式市場は、景気回復への期待感や円安進行を背景に、ほぼ全面高となり、日経平均株価(225種)の終値は前日比291円10銭高の1万5421円60銭と、今年2番目の上げ幅を記録して、2000年10月以来、約5年2か月ぶりに1万5400円台を回復した。
(読売新聞) - 12月2日21時28分更新
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