Twitter:@arisamag2

2007/8/14

力は抜けっぱなし  映画
 地元の映画館で『夕凪の街 桜の国』が上映中と気付き、観に行って来ました。

 当ブログで取り上げる映画では初の、アニメも特撮も怪獣もヒーローもロボットも、そーゆーSF的マンガ的要素が一切出てこない作品です。
 とは言え、原作はマンガなんですが(笑)。勿論原作が『ぴっぴら帳』『街角花だより』でお馴染みのこうの史代氏の作品だから観に行ったのです。原作既読。

 そんな訳で、ここから先の感想は、あくまで「マンガの実写化作品」として語ります。
 「原爆は恐ろしいねぇ」「戦争はいけないことだねぇ」「被爆者に対して偏見を持ってはいけないねぇ」みたいな話はしません。くだらないことばっかり書いてるこのブログで今更キレイゴトを語るのも恥ずかしいしな(苦笑)。




 原作は『夕凪の街』『桜の国(一)』『桜の国(二)』の三部構成。
 映画は『夕凪の街』『桜の国』の二部構成で、『桜』部分は二をベースに回想として一を折り込む形になっております。
 個人的には、いっそ全編『桜の国(二)」』中心にして後は全部回想にしてしまって良いような気もするんだが、まぁそれは所詮素人考えですし、原作三部作のうち恐らく一番反響が大きかったのは『夕凪』と思われるので、そこをキッチリ映像化しなくてどうするよ?という話もあろうし、これはこれで良いのだろう。

 そんな訳で、感想も『夕凪』と『桜』でわけときましょかね。

●『夕凪の街』
 これを映画にする時に、一番「どうするんかな」と気になっていたのは、主人公の皆実が被爆十年目に原爆症を発症して以降の展開。

 原作では皆実が血を吐いたあたりで、皆実の姿は描かれなくなる。

 被爆から僅か二ヶ月で発症した霞姉ちゃん(映画では登場しない)の死にざまと、皆実のモノローグによってのみ、その無残な状況が想像される……この箇所は大変マンガ的な表現であり、そのまんま映像にするのは恐らく困難。
 さてどうするか。なにか映画的な手法で皆実の姿を見せなくするのか、ハッキリ見せてしまうか……この映画がとったのは第三の手法でした。

 それは”綺麗に死なせる”こと。

 一応、髪の毛が抜けたり、胸元にアザが出来たりはするものの、それほど外見的な変化も無く、昔の悲劇映画でも観るかのように、綺麗に、きちんと恋人や弟と対話したりしつつ亡くなる。(原作だとそんな余裕無い)
 まあ、無残な様子を見せてしまうわけにはイカンよね。この映画でそんなことしても悪趣味な人達が喜ぶだけですし(笑)。ただ、綺麗に死なせるっちゅうのもどーかなー、なんかそこをキレイゴトにしちゃって良いんかなー、などと思いつつ原作を読み返すと、他にも色々綺麗にまとめてる事に気付く。

 皆実の「自分が生きていて良いのか」と言う苦悩は、映画では「妹や父親や周囲の人々が原爆で死んでいったのに自分が生き伸びていて良いのか」というのものだが、原作では皆実は生き残るために、助けを求める人を何人も見殺しにしたり、死体から下駄を盗んだりした事を悔いている。

 ”「死ねばいい」と誰かに思われたこと”と”あれ以来本当にそう思われても仕方のない人間に自分がなってしまったこと”の二つが皆実のトラウマなのだが、何故か映画では、後者が抜け落ちているのだ。

 読み返すまで、私はその辺の事にまったく気付かなかったのだが、気付いてしまうと何か引っ掛かる。単純に”原作と違う”ってのとはちょっと違う、もやもやした引っ掛かりが。上手く言えないけど「これは単純に設定が違うというより、物語の持つ意味が違っている気がする」っちゅうか。



●『桜の国』
 ……堺正章が最高(笑)。
 挙動不信な堺正章、思い出に浸る堺正章、涙ぐむ堺正章、娘の将来を案じる堺正章、そんな堺正章の名演技を観るだけでこの映画は既に1800円のモトがとれてます(笑)。

 それはともかく、マンガを実写にするときに難しいことの一つは「シリアスな作中に挿入される”実写だと確実に浮きそうなギャグ”をどうするか」と言うのがあると思うのです。例えば、ブラックジャックを映像にするときにはひたすら渋いキャラクターにしがちですが、原作のBJは結構ズッコケるので、シリアスなままだと原作BJのトータルイメージにはどうしても近づかないとか。
 この作品については『夕凪』の方はシリアス(泣かせ)に流れ過ぎにも感じたのですが、『桜』の方は原作も若干『夕凪』よりムードが軽めになってることもあってか、ユーモアな感じも残しつつ、シリアスなテーマを邪魔させない感じに仕上がっていると思います。
 まあ、これまた原作を読み返すと、原作だと全然そうじゃないところに泣かせが入ってる事に気付いたり、何か妙な感じがしたりもするんだが。ただ、流石に『桜の国』の方はそのまんま映画化すると軽くなりすぎて『夕凪』とバランスがとれない気がするのでこれはこれで良いのだろうか。

 そもそも”原作と違う”とかあんまり気にすんな、原作と映画は別物さ…と、ここまでの感想を全て台無しにする台詞を吐いてみたりして(笑)。

 いや、書いてて本当に”ここが原作と違う”話ばっかりで自分がうんざりしてるんですが(苦笑)。
 原作を読み返さずにざくっと感想を書くべきだった。


 えー、そんなわけで、「映画単体としてみるとステキな文部省推薦映画だが、原作と比較してみると、なにかを誤読している予感がしてドキドキする」ってのがトータルな感想っちゅうことで。……いや、俺の方か?俺が誤読してるのか?
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