アメリカ合衆国の危機管理、主に災害時の機構について検証してみたい。
FEMA(連邦緊急事態管理庁)は、1979年のカーター大統領の大統領令によって緊急時の機能・権限を一元化を行なった。これによって緊急事態における連邦政府の大幅コスト削減や連邦政府と州、自治体など地方政府との協力や関係行政機関との連携を強化した。広大な国土を持つアメリカにおいて緊急時における危機管理が最大限機能するよう独立した権限や、高度な人材や情報、技術が集積されている。平時は、研究機関としての機能も有し、地震をはじめ、大規模火災、洪水、ハリケーン、竜巻、寒波など自然災害に対する指針をまとめ、様々な調査研究を行なっている。
また、2001年のアメリカ同時多発テロ以降、米国内の安全情報に関する機関が非常に多岐にわたっていたため、DHS(アメリカ国土安全保障省)を設置した。全米で20万人を有し、国防総省に次ぐ組織となった。DHSは、平時・有事に関わらず24時間体制で、大統領の指揮下で、自然災害だけでなく、あらゆる危機対応を行い、前述のFEMAも傘下とした。
◆全米での大規模な自然災害の事例
@ノースリッジ(ロサンゼルス)地震
1994年ロス郊外のノースリッジで発生した直下型地震。M6.7、死者57名、負傷者5400名。高速道路や建物の倒壊など社会インフラに大きな被害をもたらした。経済損失は、全米史上最大級。
Aハリケーン・カトリーナ
2005年8月アメリカ南東部のアラバマ州、ミシシッピー州、ルイジアナ州を襲った超大型ハリケーン。死者1836名、不明者705名。ブッシュ大統領は、非常事態宣言を発令、48万人に避難命令を出した。米政府は、復旧対策として105億円の緊急補正、その後、518億ドルの追加支援。5万人の軍が出動する甚大な被害をもたらした。
Bカリフォルニア南部山火事
2007年カリフォルニア州南部の大規模な山火事。山林の消失面積は、東京都に相当し、被害額は10億ドル。ブッシュ大統領が、非常事態宣言を発令し、90万人以上に避難命令や勧告が出された。死者は6名。
以上、危機管理という点では、連邦政府の主導により初動対応や復旧など迅速に対応し、注目すべきは、非常事態宣言が出されるような大規模災害において、死者数という点では、最小限の被害にとどまっているといえよう。もちろん州政府や自治体、FEMAの活動も食料や支援物資の配布など支援活動も高く評価されている。
(写真は、2008年8月米連邦議会、ワシントンDCにて)
