未曾有の大震災となったが、未だ復興のビジョンが見えない。それは、財源の問題に行きつくが、「増税ありき」の議論は慎重に行なうべきである。
政府は、震災の被害額を16兆円〜25兆円とした。福島原発の事故対応によっては、30兆円規模となり、さらに巨額の復興財源の捻出が最大の課題となる。阪神大震災の10兆円を大幅に上回る。第1次補正が衆議院を通過したが、6月には本格的な2次補正を編成する。しかしながら、予備費などでは1兆1600億円余で到底足りない。現在、復興計画の先行きが見えないまま、消費税を3年間3%値上げする案や所得、法人税の値上げ、新たな復興税の創設などが検討されているが、現下の厳しい経済状況下の中で、増税を行なえば、景気の足を引っ張るのは、経済のイロハであろう。とりわけ、消費税は、累進課税で逆進性が強く、低所得者への負担感が大きい。中小企業や自営業者にも現行のインボイス(内税)方式では、税金が支払えずに倒産が相次ぐ。消費税は、あくまでも社会保障税であり、復興財源とは、区別すべきであると考える。国民全体で負担を分かち合うという理念はよいが、被災者にとっても重税感となる。所得・法人税の増税にも、現下の状況では、性急に進めるべきではない。
今後、一時的には、復興債によって賄うべきであろう。その上で、別の目的税として復興税の創設など検討していくべきである。戦後復興では、高度経済成長によって支えられ、目覚しい再生を遂げたが、震災復興ニューディールとしての経済投資効果のある施策を打っていく必要がある。政府は、国家としての復興計画のシナリオを明示すべきである。
付け加えておくが、国難ともいうべき今回の震災であるが、政局によって“増税VS減税”などといった単純な論理に矮小化することは決して許されない。
(写真は、津波によって壊滅的な被害を受けた仙台市若林区)
