厚生労働省は後期高齢者医療制度の案を示したが、「廃止ありき」でわずか8ヵ月後でまとめただけで性急であり、改革案とはほど遠い。現行の後期高齢者医療では75才以上を一律で加入させるが、新制度案では75才以上の内、無職や自営業者は市町村国民保険(国保)、サラリーマンとその配偶者は組合健康保険に加入する。
とはいえ、これによって新たな問題が生じる。例えば低年金受給の高齢者の場合、サラリーマンの子供の扶養家族になれば保険料負担を免れるが、一人暮らしで国保加入だと払わなければならない。現行制度で解消したはずの高齢者間の格差が新制度案では復活する。介護保険料をどうするのかという問題もある。
新制度導入後、国保の財政区分を75才か65才のいずれかを線引きとし、別勘定にするが、75才で区切る現行制度と実質的に変わらない。厚労省は、新制度の検討の際、6原則を示していた。そのひとつは「年齢区分の解消」だが、改革案はこれに反している。
また高齢者加入分の運営主体は「都道府県」かどうか?財政責任をめぐり基礎自治体と都道府県が最も対立する点には触れていない。総じて新制度案は、現行制度を超えるものはほとんどない。現行制度は、世代間の公平性、財政難の国保への財政支援など目指し導入したが、スタート当初の周知徹底を欠いたことから批判が続いた。
急速な少子高齢化が進む中、世代間の公平をはかり、より良い制度としてサステーナブル(持続可能)なものとして十分な議論を尽くしていかなくてはならないだろう。
(写真は、市政報告にて後期高齢者医療について質問に答える)
