ムガルズのアー写撮りが下北であった。
他の二人はステージでサドルシューズを履いてやるのだが、俺はかかとのある靴じゃ叩けないのでいつもコンバースだ。
それじゃ様にならんだろとサドルシューズを買うことにした。前から欲しかったし。
で、土曜に靴屋古着屋散々探し回ったがどこにも無い。
ボーナス出たしチョー奮発してリーガル買ってもいいだろうと渋谷のリーガルショップにも行ったんだが、そこにすら置いておらずその日は諦め帰路についた。
当日は下北ユニオン前に12時集合だったので、朝から他のリーガルに当たってみようと電話したら吉祥寺にあるっちゅう事で、サイズも告げて後程お伺いしますと伝え、我が永福町からだったら11時頃家を出れば吉祥寺リーガル経由で下北の集合時間には余裕だろうと高をくくっていたら出発直前に便意をもよおし便所に座ったところ、このクソがなかなか止まらなかった。もう大丈夫かな?とケツを拭く度に次の波が押し寄せて来る。元々クソのキレは悪い方なんだが、この日は特に手強かった。
結局大グソとの格闘を制し慌てて家を飛び出たのは11時半頃。
いかん遅刻だ、と猛ダッシュで永福駅に向かうも、すんでで電車は行ってしまう。イライラしながら待った次の電車も各停だ。
車中、これはかなり切羽詰まっているので、サイズも伝えている事だし試履はせず受け取ったらさっさと店を後にしようと考えた。で吉祥寺着いて何の迷いも無く駆けつけたサンロードに入る手前のビルは足場が組まれ改装工事中で靴など無ければリーガルのリの字も無い。「ありゃ?ハモニカ横町の先の通りだっけ?」と向かった先はオシャレなケーキ屋だった。成す術も無くその間を行ったり来たりしながら久々自分をブン殴りたいと思ったね。
そしたら、サンロードを入ってすぐ30メートル程の所にリの字の看板が見えたのです。
あー良かったと駆け込み、店員にさっき電話した旨をつたえると、齢二十代半ば頃と思わしき青年が「村山様お待ちしておりました。」と一言。さすがはかのリーガル。ABCマートとの佇まいの違いを感じ取ったその時「おい村山雅人。こげな店で試し履きばせんげな、ちいっと野暮じゃなかか?」と心の声が聞こえてきた。確かにそうかも知れんが俺は急いでいるぞ。ここで取り乱しているようでは恥だ、毅然と振舞うんだと言い聞かせる中、やがて青年が奥からブツをうやうやしく運んできて促されるままに靴に足を通し、その瞬間負けは決まった。
しかしあなどられちゃいかん。青年の「お客様、少々余裕が有る様なので、1サイズ下をお持ちしましょうか?」との問い掛けに「ああ、そうして下さい。」と涼しい顔で答え、もう一足目を装着して「じゃ、これで・・・」と寄り切ったかに思えたが、「お客様、これから梅雨時期になりますので防水にも効果がありますスプレーなど如何でしょう。」と来た。これも破れジーパンだからとナメられちゃいかん。「じゃ、それも・・・」と身分不相応に散財する。青年の「ありがとうございます。」の言葉の裏に「・・・だいじょぶかよ。」の一言を感じたのは気のせいだろうか。
一見余裕のセゾンカード1回払いを済ませ、最後に青年は店の表まで商品を持って見送ってくれた。深々と頭を下げる彼に軽く会釈してこれまた余裕の体でサンロードを闊歩し、もう見えないかな?と思った瞬間トップギアに入れ変え激走。
大遅刻の俺をメンバーは優しく迎えてくれた。
そして日曜昼下がりの下北の街を練り歩く事になる。
あの原始的な装いで・・・
↓自慢の一足。
天狗のライブでも履きたいが数時間の装着で両くるぶしの皮がベロベロにむけて痛いのです。


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