2021/8/31

Q&A意外に誤解されていること―25  日常のこと

  Q&A 意外に誤解されていること 25 
 2021.8.31
 2021.12.6。2022.2.28の追加修正済み 弁護士滝本太郎

意外に誤解されていること @
✕ トランスジェンダー女性(TG)とは、性適合手術を終えて戸籍も女になっている人、少なくとも手術して戸籍上も女性になりたい身体男性ですよね。
◯ 違います。「自らを女性と認識する」だけが要件の身体的・法的な男性です。身体違和感があることを要件とせず、手術などする気持ちのない人も含みます。ですから「女性自認者」と表現した方がより正確です。
なお、旧来は性適合手術などした元々は男性だった女性を指すことがあり、今もその意味なのだとの誤解が一部にあるようです


意外に誤解されていること A
✕ 「トランス女性は女性だ」と主張する方は、「トランス女性」を皆、@の意味で使っているのですか。定義を明確にしているのですか。
◯ 実は明確にしていないんです。

 狭義では、問@のとおり女性自認者の「自らを女性と認識する男性」ですが、強く継続的な身体違和感があり手術したい気持ちの人トランスセクシャル(TS)を含めることも多いです
逆に「自らを女性と認識していない」女性装をするだけの男性であるトランスヴェスタイト(TV)=クロスドレッサーまでも含んで言う方もいます。なんと国連人権委員会では含めてしまっています。話されるたびに、明確に確認したいところです。

 たとえば、本「トランスジェンダリズム宣言」の共著者三橋順子氏は自己紹介でまず「女装家」としつつ「性別越境者」だとし、そして2020年9月6日には「基本『自称』なんだよ」とツイートしてしまっています。曖昧に過ぎます。

 このことにより「誤解」されるように導かれています。トランス女性の例として報道されるほとんどは身体違和感の強いTSなのです。そのために、TGも身体違和で辛いと誤解されてしまっています。誤解なきようお願いします。


意外に誤解されていること B
✕ 女性自認者の性的指向(性愛の対象)は男性でしょう?
◯ 違います。それはまた別のこと、性的指向は色々です。2021.9.24関東弁護士連合会の報告によれば、東京都内の某精神科クリニックの受診者の自己申告によるとしつつ、性的指向がなし9%、両性23%、女性16%、男性45%、わからない7%です。
つまり、(性的指向が男性に向いている)ゲイの人の一部が、女性自認者だというものではないのです。なお、トランス男性(体は女性)の性的指向は、女性91%です。


意外に誤解されていること C
✕ LGBT法案の「性自認」のところは、2003年「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」の延長線上のものですよね。
◯ 違います。性同一性障害とは、性自認と身体的な性が一致しないだけでなく、外科的手術による一致を望む状態です。身体違和の強いトランスセクシャル(TS)を医学的見地から言ったもので、2022年からは「性別不合」とも言います。
今回の法案は、「性の認識」それ自体を尊重するという新しいものです。手術のうえ戸籍変更も望む2003年法とは異質のものです。
  ただ、身体違和感を持つが、未成年や健康上の理由で手術できない人も含むので、その限られた範囲では延長線上のものになります。


意外に誤解されていること D
✕ 2003年「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」で性別変更などした人は、性適合手術前でも女性専用エリアに入れてよいと考えてるんですよね。
◯ 違います。「日本性同一性障害・性別違和と共に生きる人々の会」の2019年2月20日付意見表明によれば、その中核的な人において、女性専用エリアの女性の安心・安全な環境を考慮することも、手術要件の撤廃は「更なる議論が必要」の理由としており、手術前に女性専用エリアに入れるのはまずいと考えておられます。
「日本性同一性障害・性別違和と共に生きる人々の会」2019年2月20日付意見表明  
   https://gid.jp/opinion/opinion2019022001/ 
「3.権利を侵害されることになる側(特に女性)への配慮が必要
手術を必要としないとなると、男性器を持った女性、女性器をもった男性が存在することになります。世の中にはトイレ、更衣室、浴場、病室、矯正施設など男女別の施設がいくつもありますが、これらの施設が男女別になっていることには意味があります。特に、性的被害を受ける可能性が高い女性にとっては「安心・安全な環境を提供する」という意味合いがあります。 しかし、手術を必要とせずに戸籍の性別変更ができるとなると、男性器をもった人、しかも場合によっては女性を妊娠させる能力を持った人がこうした女性専用の施設に入場してくることになります。世の中に女装した人の痴漢行為や盗撮などの性犯罪が多く存在する昨今、これで本当に女性の安心・安全な環境を提供することができるのでしょうか。」とあります。


 また2021年12月21日にできた「性別不合当事者の会」も2022年1月18日手術要件の撤廃に反対する姿勢を明確に示しました。https://note.com/ts_a_tgism/n/n1a3340e907c3

意外に誤解されていること E
✕ LGBT法は理念法だから、女性自認者が女性専用エリアに入ることが公認されて良いかは、その後に議論して決めれば良いのでは?
◯ 違います。一部の女性自認者やその支援者は、これが成立すると「トランスジェンダー女性は女性だ」とのスローガンのとおりとなり、女性専用エリアに入ることが公認されたことになるとしています。先の関弁連宣言もその方向性です。またLGBT法案を提案した議員は、記者に「いかにも男の格好では入らない」とし、女性の格好でトイレに入ると説明し「公認」する姿勢です。
そのために今、議論して、明確に定めなければならなくなってしまいました。


意外に誤解されていること F
✕ 女性専用エリアに女性自認者が入れると公認されても、その他の男性は入らないですよね。
◯ 違います。単に女装が好きな男性(TV)はもちろん、どの男性も「女性らしい」装いをすれば入りやすくなります。女性自認者との区別はつきようがないし、人権問題ですから、聞くこともできません。危うい目的のために入ることも容易になりましょう。

意外に誤解されていること G
✕ 女性専用エリアに、男性器を持つ人すべてが入れないと決めても、入り口で確認はできないから意味がない。
◯ 違います。もちろん確認は人権上して良いものでも、できるものでもありません。そのように決めることで入りにくくさせ、何かあれば通報しやすくさせ、警察も「自分は尊重されるトランスジェンダー女性だ、女性だ」と言われても、何らひるまずに対処できます。

意外に誤解されていること H
✕ 女性自認者が、あやしい目的のために女性専用エリアに入ることはあり得ないですよね。
◯ 違います。女性自認者の中にも、性的指向は女性に向いている方がもちろんいます。通例の男性同様に、中にはあやうい方もいましょう。これは残念ながら当然のことです。こう述べることは差別でも何でもありません。

意外に誤解されていること I
✕ 女性も、金銭目的の盗撮などあやしい目的のために女性専用エリアに入ることはあるから、男性器を持つ人が入れないとする意味はない。
◯ 違います。女性専用エリアは、性犯罪のほとんど男性によるものなので、男性は比較して危険な属性を持つという考えが一般的になったこともあり、確立されたスべースです。強制わいせつの被害者の96.56%は女性で、加害者は男が殆どですから、多くの男性には失礼でしょうが常識でしょう。
  一部ふらちな女性がいても、一部でも男性器ある人が入れると公認させない意義は大きいと思います。


意外に誤解されていること J
✕ 性的指向が女性である女性自認者から「性的な対象として見られるのがまずい」と言うならば、レズビアンからそう見られるのもまずくないですか。
◯ いえ、体格・筋肉も自らより一般に大きく、男性器もある女性自認者(生物学的男性)からのそう見られる場合と、レズビアンからあり得る場合とは、質的にまったく違いましょう。

意外に誤解されていること K
✕ トランスジェンダー女性で、従来、女性トイレに入れていた人までは入れなくなるというのは、酷です。
◯ 多くの女性は「分るよ」とも言うが、確かに従前、不自然なく排泄目的では入れてきた人には恐縮します。だがそれは「黙認」でした。「公認」されると危ういので、この際、明確にしなければならなくなってしまいました。

意外に誤解されていること L 
✕ 女性エリアにトランスジェンダー女性が入れないというのは、南アフリカのアパルトヘイトなどについて、1980年代「治安が悪くなる」とか「危うい人が入ってくる」恐れがあるから廃止はまずいとも言われた、それと同じ論理ではないですか。
◯ ★アパルトヘイトは黒人を差別するため、白人優位の維持のためにあり、これを廃止したくなかったのは白人側でした。
★一方、女性専用エリアは女性の安全性等を確保するために女性が勝ち取ってきたもの、維持したいとしているのは女性側であり、決定的に違います。

意外に誤解されていること M
✕ 「自認女性」「女性自認者」「身体男性」などと言った言葉をトランスジェンダー女性に関して言うは差別であり、「トランス女性に対する差別の象徴とすら評価されかねない言葉」です。
◯ 違います。衆議院に出ていた「性的指向又は性自認を理由とする差別の解消等の推進に関する法律案」第197回、衆第12号法案の「性自認=自己の性別についての認識をいう」などとある文言に基づく表現、自民党内調整の理解増進法からの表現で、なんら差別的ではありません。

 まして「トランスジェンダー女性」は、要件として「身体違和」がなくていいのですから「身体男性」と記載して尚更に差別的な言葉であるはずもありません。「女性自認者」などとすることこそ、法案の趣旨に添っていると思います。なお「女性自認男性」としないのは、女性と認識しているので「男性」と言うのは酷だと思われるからです。 

 そして、「トランスジェンダー女性」は、問@、Aにあるとおり曖昧で、およそ議論する際に適当な言葉ではないでしょう。


意外に誤解されていること N
✕ 「男は女トイレに入ってならない」と法律にはあるだろうから、ここで焦る必要はないのではないですか。
〇 その法律はないんです。労働安全衛生規則第628条等に男女トイレは分けろとの規則があるだけです。また管理者の意思により被害届出をもらい建造物侵入罪になることがありました。
しかし、性自認が法令に導入されると、建造物侵入罪が不成立となる「正当理由」として「トランス女性だ、公認されている」が主張され、怪しげなことをしていると思っても通報しにくく、警察もひるむだろうと思われます。


意外に誤解されていること O
× 「トランスジェンダー男性=男性自認者」の方は、身体的には女性ですが、男の格好をしていて、体格が良くひげが生えていても、女性トイレに入れと言うのですか。
〇 違います。女性の性犯罪は男性に比較してとても少なく、また男性は女性より一般に体格がよいので、男性は違和こそ感じても危険性が増すこともありません。ですからどちらのトイレに入っても問題はないと考えられます。女性自認者と男性自認者とで対応の違いがあることになりますが、合理的な差別として許されましょう。

意外に誤解されていること P 
× トランスジェンダーの専門家は、女性自認者はほとんど女湯に入ることなど求めていない、丸裸になる場所ではトラブルになり易いからそんなことはないと言っています。ですから論点ではないとみて良いのではないですか。
〇 違います。一部でもそれを主張する人がいることに注意すべきでしょう。信頼性ある女性自認者ばかり考えるのでは、「世の中にはホント色々な人がいる」ことを前提に定められなければならない法制定の議論として正しくないです。時速30q制限の道路だが違反している自動車が多いことがあります。しかしルールはルールです。特定の人を救済するための法律ではないんです。

スローガン「トランス女性は女性だ」にて女性としての扱われる権利を主張するのですから、その論理は女湯にも妥当します。おいおいトラブルが起きていくとみなければなりせん。「女性という自認」という曖昧かつ主観的な要件で良いのですから、女性が不安に思うのは当然です


意外に誤解されていること Q
× 「トランスジェンダー」には異性装(女装趣味・男装趣味)の方が含まれるから、今回の法案での対象になるのですよね。
〇 法案にあって本来は違いますが、その心配、更に衣装とは関係がない「性の自認」であることに注目して下さい。

というのは、一部学者や国連委員会の定義では、問Aに記載したとおり、異性装トランスヴェスタイト(TV)=クロスドレッサーもトランスジェンダーに含まれていますが、法案は「トランスジェンダー」ではなく、日本語での「性の自認」です。ですから、女性装をしているから対象になる、とはならないんです。

逆に、主観的な要件「性の自認」ですから、異性装をしていなくても、女性自認者と主張できます。「性の自認」という主観的な要件で女性スペースに入ることができると「公認」されると、怪しい目的のために女性装をすればもちろん、しなくても「女性と認識している」として入りやすくもなりましょう。


意外に誤解されていること R
× 女装して危うい目的で入ってくる男性が増える可能性があっても、それはトランスジェンダー女性の責任ではないのだから、理由にしていい筈がありません。
〇 違います。そもそも女性スペースは、性犯罪の圧倒的多数が男性によることから、無防備な場所での安全のためにできました。男性でそんなことをするのはごく一部だけれど、できたのです。トランスジェンダー女性は身体的・法的には男性で、性的指向は女性の人も多いんです。
その論拠ならば、そもそも、公衆トイレも温泉・銭湯も男女で分けなくて良いということになります。


意外に誤解されていること S
× 「トランスジェンダー女性は女性」なのに「女性トイレに入れない」というのはマジョリティーである女性の横暴で、差別ではないのですか。
〇 違います。「女性だ」は、身体的・法的にも男性である以上、「尊重してくれ」という主張、スローガンに止まります。「トランスジェンダー女性」は、「性の多様性」としてある性別男性の一つの類型ではないのですか。
実は、マジョリティーである通例男性の中のマイノリティーの課題です。
それを、女性トイレに入れるようにすることで解決するのは筋違いです。「多様性」と言っていながら、突然「女性だ」と白黒の発想になり、女性スペースを利用できる筈とすることは矛盾しています。

解決方法としては、女性トイレはそのままに、当面は男性トイレを男女トイレとして違和感を少しでも減らす、さらに別に共用トイレを多く設置していけば、トランスジェンダー女性(女性自認者)の法益も相当に守れます。
不当な差別ではありません。女性は今も様々に差別されている実態にあり、さまざまな性犯罪におびえています。女性の横暴などでは、決してありません。


意外に誤解されていること ㉑
× あれ、そうすると、法案は、もともとの性別と関係なく、「女性と自認する人」は女性に、「男性と自認する人」は男性になる、というものなのですか。
〇 いえ、今回の法律案にはそこまでは書いていません。性自認に食い違いがあることにつき尊重せよ、差別解消せよとあるだけです。ですが、欧米を中心としてそのような方向に進み、「性自認」で法的性別も変えられるところに至っている国もあります。もはや「セルフID」です。
既に、女子スポーツはもちろん、刑務所や統計、いわゆる女性枠に関しても混乱が続いているのです。日本でも、女性自認者の外国人男性が「女性だ」としてレズビアンの集まりに参加しようとしての混乱がすでに起こっています。「T=性自認」の尊重により、性的少数者「L」の法益が危機に瀕しているのです。


意外に誤解されていること ㉒
× そうは言っても、揶揄・嫌がらせされたり、仕事上の差別があったら困るから、まずは理念法から作るべきでは。
〇 いえ、職場での禁止法制はできています。2019年改正の「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」いわゆるパワハラ防止法の一環として対応できています。
その指針では、性的指向・性自認についても事業者に防止義務が課せられていて、今進められています。

https://www.dodadsj.com/content/201012_power-harassment/

意外に誤解されていること ㉓
× たかが理念法ですから、いいんじゃないの?
〇 いえ、理念法も、見解の違いや訴訟となったとき、判断指針として使われます。パワハラ防止法に加えて定めると、別の影響があると思われます。
1つは、実質「トランス女性の公衆女子トイレの利用公認」・女子スポーツ選手権等への女性自認者の参加可能性が拡がりましょう。

2つは、追々に手術なしでの性別変更、つまり性自認だけにて性別変更もあり得ましょう。つまり、性自認至上主義の進展にあると考えられます。

 
意外に誤解されていること ㉔
× それでも性的少数者の尊重のためには、絶対に必要ではないの?
〇 LGBの人にとって残るのは、同性婚の課題です。相続、年金や医療で、同性婚ができた方が助かるものですが、別の議論になります。
Tの人も、もし「男こそ男性スペースから女性自認者を排除するな、女性の安心安全も考えるよ、女子スポーツの選手権に出るは潔しとしない」という考えであられるならば、Sに書いた男子トイレの変更等が必要な本筋ではないでしょうか。

  尊重をすることは良いのですが、女性の権利法益と衝突する場合は別途定めるなどと本文に明記しておかないと、新法は性自認至上主義に向け確実に独り歩きしていくでしょう。または、議論がそう分かれるものではないLGB「性的指向」の尊重・差別解消についてだけの法律にする方法もあります。


意外に誤解されていること ㉕
× そうは言っても、2015年9月、国連総会で採択のSDGs(エスディージーズ)「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の目標5では「ジェンダー平等」とあるから、「トランス女性は女性」として対応しなければならないのでは。
〇 それが違うんです。SDGsでは、むしろ性自認を含めて性的少数者への対応は注意深く避けられているんです。36ページもある外務省日本語訳を読んでも性的少数者という単語が見つかりません。

  目標5は正確には「 ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児のエンパワーメントを行う 」なのですが、中身の6つ(abcを加えて9つ)あるターゲットも男女平等にかかることばかりで、cに「ジェンダー平等の促進、ならびに」とあるだけなんです。

  むしろ目標6が「すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する」とあり、そのターゲット6.2では「2030年までに、すべての人々の、適切かつ平等な下水施設・衛生施設へのアクセスを達成し、野外での排泄をなくす。女性及び女児、ならびに脆弱な立場にある人々のニーズに特に注意を払う。」とあることが注目されます。

  国連事務総長が「LGBTはSDGsのすべての項目に関わる問題であり、『誰も置き去りにしない』というSDGsのモットーに含まれている」と言ったと指摘されますが、総会で採択のSDGsの中身が変わるわけではなく、目標5のトイレに明記されている「女性及び女児、ならびに脆弱な立場にある人々のニーズに特に注意を払う。」ことこそが重要なのではないでしょうか。
  なお、しばしば、2016年11月のジョグジャカルタ原則「性的指向と性同一性に関わる国際人権法の適用に関する原則」をあげられますが、これは国際法律家委員会や元国際連合人権委員会構成員および有識者たちの草稿に基いて採択され、2017年にはジェンダーの表現と性別の身体的特性について補完されたもので、条約でもなければ、国連の理事会や総会で採択されたものでもありません。
          以 上
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