台湾訪問というのは去年の木曽の林鉄のイベントで聞いた「屋久島より安い」という話以来念頭にあった事であり、じゃ情報をと誰に聞いても今の台湾を悪く言う人がいない。うかうかしてると古い車両は廃車になっちまうぞと思いつつ、パスポートを取得したものの、同じ頃には屏東線にたくさん残っていた冷気平快車も無くなるという悪夢(?)も事実となり、結局よく判らない状況の中、旅立ちを迎えた。
あと私が団体旅行などおとなしく参加できる訳が無いので、航空券、ホテルの予約は個人で確保しておく。言葉の心配は大きいが、私に他に道は無い。
まず「ムーンライトながら」で名古屋、キハ75の8連や117系、さらにはパノラマカーの誘惑をなんとなく通り過ぎセントレアへ。航空券は北海道旅行と同じ感覚で確保できたが、出国時には帽子、ベルトや靴が次々金属探知機にひっかかるというまさに「ドリフ状態」。先が思いやられる。
しかしそれ以上のトラブルは無く、B737のウイングレットのついた機体(−700?)で一路台湾へ。小さいよね。窓際だが途中は海でそんなに色々見える訳ではない。しかしかの地の上空についた時には急に「初の海外」の気持ちが襲ってきた。両替を行いものすごい入国審査の列をやっと通って(成田からの便と到着が重なったのだ)「高鉄」方面へのバス乗り場へ。「タイペイ?」とオバさんに聞かれたので、「シンカンセン ステイション ハウマッチ?」と言うと「アア ソコニツク ナカデカウ」との事。そう「高鉄」とは新幹線なのだ。台湾での言い方は聞いたが「シンカンセン」と言った方が通りが良いという。ほどなくバス到着。あたりはみんな日本人だ。30元を箱に入れる。事前にお釣りはくれないと聞いていた。
車は右側通行。「徐行」は「漫行」、「消火器」は「滅火器」と違いを勉強しながら「高鉄桃園」の駅へ。まずは台中を目指す。切符は自動券売機の方が判りやすい。「自由座」は自由席、「対号座」は指定席。さらに「商務車」を選ぶとビジネスクラス(グリーン車ではない)になる。おすすめはもちろんビジネスクラスで大して高くもないが、ケチなので「自由座」にする。また、クレジットカード(信用下)専用のものもあるので注意。
ここでは係の人が居て、判らなければ教えてくれる。買った切符は改札機に裏側を上にして入れる→切符を取る→ドアが開くの順。月台(ユエタイ=プラットフォーム)は「北上」、「南下」と判りやすい表示。
列車は大変混雑。旧暦の端午の節句なのだ。黒い寒天の飲料を飲んでいる親子を見て南国を思う(これ、「飲むゼリー」みたいだが、結構悪くない)。私も自販機で25元出して水を買う。標準車に関して言えば車内は700系新幹線そっくりだ。しかし脱出用ハンマーなどの装備がある。
風景はどこか静岡県、それも沼津とか富士のあたりに似ている。しかし見たこと無い水牛みたいな牛がいたり、四角い独特のデザインのトラックがいたり(実は4駆でサトウキビの収穫にはこれの独壇場らしい)、ヤシの木が南下するたびに増えたりと面白い。
その「高鉄台中」の駅からは「台鉄」の「新烏日」駅に連絡している。ここから「彰化」の駅まで「区間車」に乗る。「台鉄」は台湾の国鉄と考えて良い。「区間車」は通勤電車で指定席快速の「復興号」と同じ料金である。漢字で表示された自動券売機があるので切符もそんなに苦労せず買える。大人は「全票」だが背の低い人には「半票」という割引もある。枚数の単位は「張」。「来回」は往復切符。通勤電車は大きく、床が高い。ここで乗ったのは韓国製だった。「彰化」まで二駅、間にあるのは「成功」というおめでたい駅名である。
到着すると「台鉄」の「台中」(「高鉄台中」と別の駅でややこしい)行きの区間車、こちらはディーゼルカー(紫油客車)がいる。さらにその向こうには行李列車がいる。昔の日本にもあった荷物列車である。日本では新聞・雑誌や駅で受け取る小荷物(チッキ)を運んでいたが、台湾ではバイクを運ぶ。日本にもモトトレインってのがあったなあ。その最後には見られないと思った「冷気平快車」がついている。廃車回送だろう。ホントは乗りたかったな。
その彰化には何があるかというと、機関区(機務段)の一部が公開されているのだ。駅を出ると「モシモーシ」とタクシーの運チャン(向こうでもこう言う)声をかけてくる。散策したかったので「ウォッチングトレイン、スグソコ」というとそれ以上の営業をしなかった。まあ暑いし鉄路迷(鉄道キ○ガイ)はあまり相手にしないのかな。温度は日本と比べてもそんなでも無いが湿気がすごい。派手なバス、オート三輪(撮れなかったが)、自動車は多いが名物のバイクはまだ多くない。
駅を出て左へ、少し歩いて鉄道のガードをくぐると機務段の扇形車庫である。「アイ ウォント ウォッチング ザ ロコモーティブ オーケー?」これで通じた。住所を書けと言う。他の人は台中や嘉義で、日本国は私一人である。
奥に行くとCK101、CK124(日本のC12と同型)といった蒸気機関車から電気機関車、ディーゼル機関車、貨車移動機(台湾では調車機とか調動機)、鉄道クレーンなど、生きている機関区がそのまま見られる。タイミングが合えば解説も聞ける。写真もノープロブレムなので、好きな人は一度は行くべき。横を(草冠に呂)光号(全車グリーン車指定席の急行)なども通過していく。
貨車移動機は日本の10t移動機そのものだが、本線のディーゼル機関車はアメリカのロードスイッチャー。なかよく共存している。
さて道を戻り今度は台南を目指す。今考えればここから自強号(全車グリーン車指定席の特急)に乗れば良かったが、「高鉄」の方が速いだろうと思ってしまう。「新烏日」への帰りは猪木顔のEMU700だった。「高鉄」もまた「自由座」にしてしまう。
しかし実はこれは失敗で「高鉄台南」と「台南」は10キロ以上離れている。バス(免費=無料だが)で45分。ここの運チャンは(最初は運チャンと判らないが、人の集まるところに来るのはここでは運チャンか宿屋のあんちゃんと見て間違い無い)「タクシーならイーパイ(100元)で5分」という。5分は無理だろう。道が混んできているし。結局バスで今夜の宿のある台南へ。
駅前についたバスを降りると、店によってすごい高低差のあるアーケードを通ってホテルに向かう。プユマホテルといい、ビルの上の方を使っているのだがなかなかいい。パスポートを出して本人確認。日本語で通じる。ダブルベッドの部屋を一人で使う。
さてメシである。ホテルの近所にはメシ屋が多い。「食堂」と「メシ屋」はだいぶ違う。○○飯と××湯、あと「菜」を頼めば結構たくさん食えると言う。実際35元で結構な量の水餃子がでる。150元ぐらいでおなか一杯になる。「魯肉飯」はチャーシューのこまぎれ(?)の入ったご飯。「酢辛湯」とかは日本人でも読めるね。焼いた餃子は「鍋貼」。あと簡単な日本語ならできるみたいだ。ここ終わったら坦仔麺(坦坦麺の原形とされる)の店行って、棺材板(パンをくりぬいてシチューを入れたもの)の店行って…と思ったが最初の店で食いすぎである。でもデザートの店は行った。かき氷は遠慮しといたがホンモノのマンゴーは色々な意味で強烈である。日本じゃ食ったことないが。
近くの廟で野外コンサートをやっているので、雰囲気だけ楽しむ。
実はこの時点では熱気に浮かされて、町の様子の強烈さに気付いていなかった。あの紅毛城あたりの夜の様子を撮っておくんだった。

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