スイスと言えば、4つの公用語を持つことで知られています。
ドイツ語、
フランス語、
イタリア語、そしてあまり見かけないけれどロマンシュ語。
店で買ったお菓子の表示も、携帯電話の説明書も、役所に提出する書類も、全て
独仏伊の3ヶ国語です。(スペースに余裕があれば、これに英語が加わりますが、あまり期待は出来ません)
ベルンは
ドイツ語圏に属しますが、電車で30分のFribourgは既に
フランス語圏です。
ドイツ語圏での電車のアナウンスは
独仏英の順番ですが、
フランス語圏になると
仏独英に切り替わり、駅の広告もデザインは同じだけれど
独から
仏へ。乗客の読んでいる新聞や本も途端に
フランス語に変わるのが印象的です。全ての情報を3ヶ国語で印刷しなければいけないというのは大変な労力なはずなのですが、この一見不便な状況をかたくなに守り通してきたところが実に”スイス人らしい!”気がします。
他のスイスの地方ではどうか知らないのですが、ベルンではフランス語圏に近い土地柄なのか、首都であるため外国人の人口が多いせいか、駅や役所はもちろん、病院でも店でも、多くの人達が2ヶ国語のみならず、3カ国語、4ヶ国語を日常的に平気で操るのにはいつも驚かされます。
あるドイツ人同僚の体験を例に出しましょうか。
イタリアンレストランの隣のテーブルで、スイス人同士が
スイスドイツ語で話をしていた。そこにフランス語圏の友人登場。一斉に会話が
フランス語に切り替わる。おしゃべりが一段落したところでウェイターがやってくると、全員が
イタリア語で注文し始めた。
ね、恐いところでしょ?
職場の面接でも何語が話せるかという質問が何度もありましたし、病院の登録用紙にも言語という項がちゃんとありました。
母国語は何か、という問いに続いて、独仏伊英それぞれの読み書き・会話のレベルを記入しなくてはならないのです。
しかも、その下には5つほど自由に記入する欄が。。ってことは、それ以上の言葉を操る人もいるって事??
私は当然空欄ばかりですが、幸いなことに今のところ解雇の通知は来ていません。(笑)
そうしたわけで、
初出勤の記事でも少し触れましたが、スイスでは初対面の挨拶でも、会議でも、小さなミーティングでも、ちょっと飲みに行く時でも、まずどの言葉を採用するかについての合意が取られます。
ドイツ語がおぼつかない私がミーティングに加わると、自動的に「じゃ、英語にしますか。」となります。「英語にしますか」の一言で、用意していたプレゼンテーションをドイツ語から英語に難なく切り替えてしまう同僚たち、本当に「こいつら、すげーっ!!」の毎日です。
一事が万事こんな具合ですから、ドイツ語が話せなくてもどうにか暮らしていけるだろうなあ、と感じることがしばしばです。
ただ、ここが「言葉を学ばなければいけない!」という危機感、モチベーションに欠けてしまう危険な落とし穴でもあります。
実は、セントルイスの同僚だったLuziusやGuntherからスイスで働くにあたってもらったアドバイスは
「病院ではもちろん英語も通じるけれど、片言だけでもドイツ語は話せるようになって来たほうがいい。」
これだけでした。
”言葉の得意なスイス人だからこそ、自国の言葉に興味を持ってくれない人、学ぼうとしない人は仲間として受け入れられにくい”というのです。
確かに、私がドイツ語を多少理解するらしいとわかった途端、手術室の看護士や同僚の麻酔科スタッフの態度が一変するのがよくわかります。
「あなたどこから来たの?」に始まり、疲れてそうだから休憩してらっしゃいだの、ロッカーが一杯で入らなかったカバンを婦長さんのオフィスに預かってあげるわだの。。さっきまでのよそよそしさは一体??
思うに、日本人同様、スイス人も外国人にはシャイなだけなんじゃないかと。公用語以外の英語で喋らないといけないと思うと、悪気はなくても身構えちゃって腫れ物を触るように接してしまうんじゃないかなー。
見た目ごつくてコワモテ系の多いスイス人、結構可愛いところがあっておもしろいなあ、、と思う今日この頃です。

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