2018/5/26

隣席の乗客との会話  短歌

その老婦人は名古屋から乗車してきた。東京行きのひかり号の私の定席であるE席の隣席のD席に着いたその人は大きなキャリーバッグを膝の前に固定しながら「お世話になります」と言って座った。私もつられて「いえいえ、こちらこそ」と返していた。溜まっていた本を読んでいた私に遠慮してか、その人はしばらくは黙って座っていた。

ところが列車が浜松を過ぎたころ、「そんなに小さな文字が読めるなんて、目がよくていいですね」と声をかけてきた。それで「いやあ、十数年前に白内障の手術をしてからはおかげさまで近視も進まなくなったのですよ」と答えたら、「私も白内障の手術を数年前にやったが、どうも調子がよくなくて。病気の治りも遅くて、歳を取るといけませんね」と返事がきた。

私は「そうですね、でも、ものは考えようではないですか?年寄りのほうが病気の進行が遅いという面もありますよ」と返した。老婦人もそれは肯定し、その後はその人が静岡まで行くのだとか、私は研究会で東京に行くのだとかを話したりから始まって、前回の研究会のテーマであったAIの話まで発展し、いくらAIが進化しても人間には敵わないとか、人間というものはいいですね、などに話題は及んだ。

老婦人は「お世話になりました」と言い残して静岡駅で降りた。読書の邪魔をされたという気持ちより、何やら清々しい気持ちになれたひと時ではあった。
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