昔は水が枯渇すれば、田畑の耕作に甚大な影響がでるので、水害や干ばつを克服してはじめて、農業収益の確保、庶民の生活を安定させて天下泰平、国家繁栄をもたらすことができると言われ、「水を制するものは国を制する」戦国大名や江戸時代の為政者たちは、知恵を集め、治水に膨大な資金を使ってきたのです。
それは農業が盛んに行われていた時代のことであって、工業化が進んだ現代では、日本の食べ物の自給率は40%(カロリーベース)を割るような状況で、耕作を放棄した田畑が増え、治水に膨大な資金を使うことはしてこなかったように思います。
戦後の農地改革で小規模農家が増え、若者の労働力は工業化で都会へ働きに出て行き、生産性が低い小面積の農家は、不採算や高齢化が進み、耕作することすらままならない耕作放棄地が増えたのです。
地球の温暖化が進んだのか、北海道や千葉県に台風が上陸する時代となり、今年の台風15号、19号の被害は上陸した後、日に日に大きくなり、なかでも阿武隈川・千曲川などの堤防が決壊するなど、農業への被害も甚大なものとなりました。
台風19号による大雨で、千曲川などで起きた堤防の決壊を、東京大学などが約30時間前に予測していたそうです。住民への情報提供は国の規制で認められていないため、公表されなかったそうです。
河川の地形と通常の水量、気象予測に基づく流入雨量や雨雲の進路など膨大なデータから、シミュレーションが可能だったようです。
農業が目的の治水ではなく、今や人命に関わるリスクを減らすためにも、堤防の補強や強化など、台風や豪雨に対応する公共事業を推し進める必要があります。
同時に、耕作放棄地へ生産性の高い農産物を作るには、消費者の意識を変える必要があり、人命を救うことにつながるのではないでしょうか。
千曲川の氾濫: 写真はインターネットから借用

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