省庁や地方自治体の「障害者雇用の水増し問題」で、糖尿病の職員や他の病気で休職中の人を障がい者にカウントする、あるいは障がい者がまったくいないのに「雇用している」と報告したなど、地方でも次々とあきれんばかりの状況が報道されています。
役所のホームページやパンフレットなどで、弱者にやさしい社会などの表現を、見た記憶がありますが、あれはいったい何でしょうか。
本来あるべき雇用とは、採用した本人の能力を最大限に引き出し、事業における戦力として活躍できるような働き方を提示することが必要です。
とりわけ精神・発達障がいのある人たちの中には高い潜在能力を持ちながら画一的な就労形態への適応が難しいために働けていないケースが多いと言います。こうした人を活用する“働き方改革”は浸透に時間がかかると思うのです。
働き方の見直しという観点から障がい者雇用の推進策を考えるべきで、障がい者だけでなく、すべての人たちにとって働きやすい環境を作ることに力を注ぐべきで、職種や職場に合った雇用率を考え、法で定める雇用率の性急な引き上げは問題があるように思います。
障がい者が従事している作業の多くは、社内清掃、メール便の分類、内部書類のシュレッダーかけなどで、企業業績の向上に寄与するわけでもなく、社内でこの手の障がい者の仕事を、わざわざ増やすことは企業経営にとって決してプラスになっていないのです。
今年4月に引き上げられた障がい者雇用率が2020年には、さらに0.1%上がることになっていて、雇用して仕事の内容に限界がある企業は、「企業名公表」を回避するために何か手を打たなければなりません。
企業名公表という“脅し”をちらつかせつつ民間の雇用率を引き上げていく、現行の障がい者に対する雇用政策は、曲がり角に差し掛かっているようです。
「未達成企業名公表」を回避するために企業は何らかの手を打たなければならず、そこで、そうした企業向けに障がい者雇用を引き受ける子会社や、ビジネスが登場しているといいます。
こうした子会社やビジネスに期待しているのは法で定めた雇用率をクリアするためであり、障がい者の人員を削減するような生産性向上の作業は願い下げで、常に親会社のお荷物のような事業となり得るのです。
役所に向けて、民間のように生産性を上げなければ、税金のムダ使いだという風潮が行き過ぎ、今回のような役所の雇用率に影響を与えたような気がするのです。
今回、官庁の水増し問題を機に、民間も含め一律に障がい者の雇用を定める現行法には問題があり過ぎ、現在の状況を把握した上で、時代に沿った雇用率の検討、改正が行われるように望むしだいです。

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