子どものころ、私の祖母は「勉強して、いい学校へ入学して、いい会社へ就職して、高い給料をもらって、立派な人になるのだよ」といっていました。
戦後の生活が苦しい時代の最中でしたから、明日をどのように生きていくかの目標を求めて、日本中が模索しているなかで、とりあえず「何かをしなければ」と言う答えだったのでしょう。
聞いていた私も「立派な人」はどんな人なのかも分からず、そうなるには勉強することが必要だと言うことだけは分かりました。
中学校へ入って、将来の進む道を決めるときになって随分悩みました。立派な人になるための具体策がないのです。
同級生の半分は就職して、早々と社会に一員になって「立派な人」を目指すと言うのです。進学するにしても「いい学校」は見つかりませんでした。
その時です。将来、何がしたいのかという父親の問いに、中学生の私には、まだ漠然とした職業のイメージしか沸かなかったのです。
昨年に刊行された『君たちはどう生きるか』(マガジンハウス)は爆発的な売れ行きだそうです。就職支援をすることになった私も、再就職を目指す人へ「何がしたいのか、何ができるのか」など、数多くの人へ問いかけてきました。
第四カーブを終わりかけた私の人生も「立派な人」になりそこなって、ただの人のようですが、これからの時間も「立派な人」を目指して努力したいと思っています。

4