怒りや恨みなどの明確な動機がない殺人事件が再び起き、ニュースを知って重苦しい気持ちになります。名古屋で女子大学生(19)が知人の女性を殺害した疑いで逮捕され、「子どものころから人を殺してみたかった」と供述しているというのです。
昨年7月にも佐世保市で、高校1年生の少女(16)が級友を殺害して逮捕される事件があったばかりです。この少女も「中学生のころから、人を殺したい欲求があった」と述べてニュースになりました。
さらに遡れば、平成12年に豊川で起きた男子高校生(17)は、「殺人の体験をしてみたかった」と、主婦(68)を刺殺した事件がありました。
このような事件が続くと、特異なケースと云ってよいものでしょうか。3人とも学校では、明るく活発、成績優秀と評判のいい若者で、知的な面では優れているにも拘らず、「殺してみたかった」など、善悪の判断が出来なかったようです。
歪んでしまった気持ちを抑えきれなかったのは、いったい何だったろうかと疑問だらけです。豊川の事件をきっかけに青少年による凶悪犯罪がセンセーショナルに報道され、少年犯罪は少年法厳罰化の一因にもなりました。
しかし、法を厳罰化しても事件の再発防止につながっているかどうか疑問です。もちろん被害者家族の心情を思えば、厳罰にせざるをえないでしょうが、その前に打つ手はなかったかと思うのです。
3事件の共通点は、極めて成績優秀である若者が、犯罪行為との乖離が疑問で、今回も精神鑑定がなされると思いますが、豊川の場合はアスペルガー症候群と診断されたようです。
事件は広い範囲における高機能自閉症児に対する早期の教育支援が必要であることを認識させ、後に特別支援教育として制度化されることになりました。
それでも、なお起きる殺人事件は、生き方に迷った末の破滅願望や自暴自棄、過激な思想に走る若者を「いったい如何すればよいのか」考えさせるものです。

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