印刷技術が発達していなかった時代、寺院では複数の僧侶が同じ経典で修行するには中国から伝わった木版の印刷が必要でした。また、印刷でなく仏法を広めるために写経を続けることは功徳となると教えられてきたようです。
一般的に文書は一枚一枚書き写すしか手段がなかった時代でしたが、1894年(明治27年)、エジソンが発明した印刷機を参考にして、滋賀県出身の堀井新治郎・耕造親子が謄写版印刷機を開発し、戦前は軍隊で、戦後も映画、ラジオやテレビの台本、学校での教材、同人誌など「ガリ版刷り」と云う、当時を代表する手軽な印刷方法が用いられてきました。
やがて、コピー機やワープロの普及で使われなくなりましたが、1980年頃まで、私も1カ月1回「ガリ版印刷」で新聞を発行していました。ロウ敷きの原紙をヤスリ盤に乗せて、鉄筆で文字や絵を刻んで原稿を書きます。原紙の下に紙を敷き、網をかぶせたうえでインクを塗ったローラーを転がすと印刷ができるというものでした。
最近、新たな印刷技術として立体物が作れる3Dプリンターが話題となりました。紙へ平面的に印刷するのに対し、3D・CADデータを元に、通常は積層造形法によって、立体的に3次元の目標物を造形することができるという優れものです。
図面さえあれば、拳銃などの武器も製造できてしまい、既に作った男が逮捕されています。また外科手術にも貢献したといいます。
これまで多くの費用をかけて金型を作っていた製造業者が、小型の3Dプリンター1つで実現できるとなれば、資金力に乏しい中小企業や個人でも、求める形状のモノが手軽につくれるようになり、コンピュータのデータを変えれば、幾つものパターンで製造することが可能となったのです。
ただし、「何でも作れる」というわけにはいかないようです。現状では材質が限られるため強度に問題があるようです。
「印刷技術はここまで来たか」の感があります。低価格の家庭用機種も発売されるようですが、暮らしに役立つ便利な道具として期待したいものです。
アトレ刈谷ミササガパークにて: 2014.5.19撮影

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