中学のころ授業後のクラブ活動を終えると、街の道場へ柔道の練習に通った経験があります。当時身長は170センチ程ありましたので、練習相手は大人ばかり、後に偶然同じ会社で仕事をすることとなったTさんとは同じぐらいの体格で、よく練習をしたものでした。
柔道は受身が旨くないと怪我をします。乱取りに入る前に充分な受身の稽古ができていないと返し技を喰らった時、自然に受身ができないとひどい目に合います。
勝負は一瞬にして決まるときが多く、投げられたときの悔しさは当人で無ければわかりません。何度も何度も投げられて負け、もう止めようかと思ったことは何回もありました。
十歳年上のTさんは、普段優しいのですが柔道衣を着けると人が変わったように厳しくなります。道場の側壁に叩き付けられて暫く立ち上がれなかったこともあります。今は懐かしい思い出ですが、就職した会社に彼が居たのには驚きでした。
彼とは道場の稽古相手、心を許し何でも話せる兄貴のような存在でした。しかし家庭の事情で退社、その後音信不通になりました。彼からは、柔道を通して大切なことを学んだような気がします。
スポーツを通して学生は多くを学びます。勝つこともありますが、負けることも学びます。勝つことに拘りもありますが、やがて社会人になると負けることの方が多いのです。そして相手の気持ち、中でも負けた時の悔しさを理解し、人を思いやる心ができるようになります。
企業が採用時、スポーツ経験者を歓迎する理由は、人を思いやる心や、負けても負けても這い上がろうと、粘り強く励む心が備わった人を求めるのです。

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